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4. リンカー

 

「とりあえず、ここにはホッリビスがうようよいるから、早く発展街の方へ行こう」

 星子は状況がよく飲み込めないまま、困惑した表情を浮かべていた。もしかしたら死の淵に彷徨っている最中なのかもしれない。そうだとしたらこの場所は地獄と天国の狭間にある場所なのだろうか。それとも、自殺した事すら単なる夢で、起きた時には平然と木の天井を眺めているのかもしれない。


 星子はとにかく、ついていこうと立ち上がった。そこで改めて自分の姿を見下ろして確認をしてみると、胴はくっついているし、傷一つなく、おまけに制服姿のままだった。それでもどうせ一度は死んだ身だ。特に危機感情もなくディーアの背中をついて歩く。


「さっきホッリビスとか行ってたけど、何のこと?」

 足元がやけに弾力があるなと思って見下ろすと、それは人の体内の粘膜のような地面だった。見た目だけで臭気が漂ってきそうだ。それに空は赤黒く、太陽がどこにも見当たらなかった。

「ホッリビス。病原菌のような奴らさ」

「ソレは沢山いるの?」

 ディーアは先端を軽く下げて頷く。少しだけ仕草は人間らしく見える。

「それに神出鬼没でどこから現れるか分からないんだ」

 星子は余計に何が何だか分からなくなってきた。次第に考えるのも無駄だと思えてくると、今この状況は夢なのだと思い込むことにした。このヒトデのような気持ち悪い生き物に従ってついて行けばいいだろうと、投げやりな気持ちになっていた。

「ねえ、発展街って場所遠いの?」

「いや。すぐそこさ。この道なき道を真っ直ぐ進むとすぐにある」

「気味が悪いわ。この場所」

「気味が悪い?君がそんな事を言うなんて全く笑えるよ。ああいや、失礼。気を悪くしないでくれ」

  ディーアは何か意味深な風に言葉を含ませた。その時だった。地面からうにょうにょと黒い蛇のような生き物が現れ、星子の足首へと巻き付いてきた。

「きゃ!!なにこれ!気持ち悪いっ」

「ホッリビスだ!!」

「お願い、何とかしてっ助けて」

 そのおぞましく形を成す姿に思わず吐き気がした。しかも黒い職種は、ズリ…ズリ…と足へ懐くように這いずり上がってくる。

「大変だ。このままだとホッリビスに心が侵食されてしまう」

 星子は余りの恐怖と気持ち悪さに、鳩尾から吐き気が迫り上がってくる感覚を覚えた。

「早く何とかして。お願い。嫌…」

 声は虚しく宙へ消え、更に足元からずりずりと地面へと引きずり込まれていく。その光景を見て星子はひいっと喉をひっくり返した。

「星子!!」

 ディーアは叫ぶが、止まることなく地面へとゆっくり穏やかに埋め込まれていく。星子は絶望に涙を溢れさせながら心の中で懇願した。


──お願い。助けて。死にたくない。まだ、まだ。私は……。


 固く瞼を閉じて強く念じる。気がつくと首まで地面に引きずり込まれていた。星子は瞼を閉じて唇を噛み締めた。すると、ディーアの身体は突然、星のように美しく輝いた。瞼の裏に明かりが灯ったことに、星子は不思議そうに目を開いた。

「ディーア…」

「星子、君の願いが死に星に通じた。君の生きたいという精神エネルギーは僕の星の輝きとリンクし、リンカーとなる」

「何?言ってる意味が分からない」地面は顎先まで迫り、もういっぱいいっぱいだった。

「後で説明する。とりあえず、今は星に願って。君の生命力に反応して僕は力を発揮する」

「願う、って…」


 目の前の異常事態に考えている暇など無かった。星子は懸命に願いを口にした。

「死に星よ。私に力を下さい。私に生きる力を!」

 精神の源は、ディーアをより一層白く、辺りへと輝きを放たせた。その光の粒子は星子自身を包み込む。宇宙空間にたった一人、生まれたままの姿で浮かんでいるような心地よさがしたら。

──暖かい。

 星子の体は内側から熱が帯びる。次の瞬間、体はいつもよりも軽く、力が漲っているように感じた。光が晴れていき、また黒い景色が目の前に広がる。いつの間にか、地面から脱出できていたようだ。ふとディーアの姿が見当たらないことに気がつき、首を左右に動かした。

「ディーア?」

「僕はここだよ」

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