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死に星 ―twinkle of death―  作者: 白宮 安海
第二章 ベストフレンド
19/21

6.塵と屑 6

何度も呼びかけていると、ようやく昴の瞼がゆっくりと開いた。それを見て、星子はほっと胸を撫で下ろす。

「……良かった」

「星子、ちゃん?あれ、ここはどこ」

昴は辺りを見渡した。

「分からない。そういえばさっき、ディーアの声が……。そうだ、ディーアに話さないと!」

――星子。

「ディーア!大変なの。私、変な……変な所に捕まっちゃって。お願い、助けに来て」

――星子、その子を、昴を信用しちゃダメだ。

星子は一瞬黙って、昴の方を見た。

「え?」

「どうしたの?星子ちゃん。ディーア君とは話せた?」


――星子、昴は。

その時、部屋の向かい側の錆び付いた扉の鍵が一鳴きし、苦しげな音と共に開く。白い光から現れたのは、あの気の良さそうなここの宿の主人だった。

「手荒な真似をしてすまないね。これも商売だ。許してくれ」

主人の口から告げられたのは残酷な裏切りの言葉だった。星子は全てを察した。

「あなたが……、私達を?」

店主は細い瞳を吊り上げて醜く笑った。

「死に星とリンカーは高く売れる。特に若い女の子ならば尚更。知ってはいるだろうが、リンカーはリンク者の願いによって姿形を変える事が出来る。その特性を利用すると、色々と捗る為に欲しがる客が多いのだよ」

愉悦に歪んだ口元を見て、星子は思わず悲鳴を上げそうだった。主人が二人にそっと近づくと、星子は何とか逃げようともがきながら、昴の方を向いた。

「昴ちゃん!……逃げないと!」

しかし、昴は俯いたまま静かに動かずにいた。異変を感じ、昴の顔を伺う星子。

「昴……ちゃん?」

主人は、連なる鍵の一つを手にすると、昴の拘束具の鍵穴に嵌めて、拘束を解いた。その光景に目を見開くと、昴は赤くなった手首を擦りながら、星子の方を、いつもと変わらぬような表情で見つめた。

「ごめんね……、星子ちゃん。こうしないと、私達は生きられないの」

まだ何が起こっているのか、うまく状況を飲み込めなかった。ただ、感情の回路だけが急くように、両目が熱くなった。

「嘘……でしょ。昴ちゃん、私の事を、騙したの?」

「騙したわけじゃない。友達になれたのは嬉しかった……でも、こうするしか方法はないの。ごめんね、星子ちゃん」

昴は、悲しそうに言って出口へと進んだ。

「いつもすまんな。これが今回のお前さんの取り分だ」

主人はへらりと笑って、昴に金の入った袋を渡した。昴はそれを受け取ると、もう一度星子の顔を見て、「ごめんね」と呟いた。星子は全身が縛られるような痛みに、とうとう涙を零して、項垂れた。

「明日オークションの開催だ。それまで今晩の夜を楽しめ。人として思考が出来るのは今夜限りになるかもしれんからな」

主人はそう言い残すと、扉の向こうへ消えていった。最後に昴の背中を見た。待ってとも言う気力も起きず、光が細く吸い込まれていく様を見て、絶望に身を任せた。


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