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死に星 ―twinkle of death―  作者: 白宮 安海
第二章 ベストフレンド
18/21

5. 塵と屑 5

「あれ、ここはどこ」

星子は学校の教室の床のフローリングに寝転んでいた。木目の間には落ちなくなった黒ずみが付着している。この教室には見覚えがあった。自分の姿をよく見てみると、あの姿ではなく制服姿であった。

星子はひどく頭痛と吐き気を覚えた。立ち上がろうとして傍の机に手を置いた。その机の表面に星子は目を落とす。そこには、残酷な罵倒が沢山、深く切り刻まれていた。妙な冷や汗が滲み出す。悪口から目を離せずにいると、机から気持ちの悪い芋虫が、どこからともなく蠢き湧いてきたのだ。

「ひっ!」星子は尻もちをついた。

黒板の方を見てみると、チョークで女と男が裸で絡み合ってる絵があった。その横には淫乱女、学校に来るな、などの暴言が黒板を埋め尽くすように書かれていた。


視界がぐらつき堪らず、星子はその場で吐いてしまった。

ここから逃れたい。強くそう思った星子は、足早に教室を出て行った。


――助けて、助けて、助けて!誰か!


廊下をただ真っ直ぐ走っていく。とにかくどこかへ逃げたかった。何か得体の知らない者にでも追われているような気分で。

星子は屋上へと上がった。曇った景色が、遠くの連なりを曖昧にし、まるで死んだ世界のように思えると、少しだけ安心した。


柵を超えれば自由になれるだろうか。ぼんやりと思いながら柵へ向かうと、誰かが自分の手を握った。顔を上げて、その人物を確かめようとするが、表情は暗闇に溶けて見えなかった。

「大丈夫。私がついてるから。星子ちゃんには、私がいるから」

「――ちゃん」

その瞬間、星子の脳に電気が一瞬走ると、聞いた事のあるような声がした。

――しこ、星子。

その声は必至に自分をひきとめるかのようだった。

――星子、星子。戻ってきて。そこは君の居場所なんかじゃない。星子。


声は段々とはっきりしていく。握った手を離そうとすると、その子は言った。

「それの言う事は聞いちゃダメ。星子ちゃんが危険になるだけだよ」


――星子、星子。

声は抑揚もなく淡々とした口調なのに、何故だろう。星子の胸の奥には不思議な温かさが灯る。

――星子には僕がついているよ。

「ディーア」

そう名を告げた瞬間、星子の目からは無意識に涙が一筋通った。

そして、星子の見ていた世界が空から崩れ落ちる。星子は何も思わなかった。この世界がどうなろうと構わなかった。

――目を覚ましたかい?


頭の中に、もう一度声が響いた時、星子は地下の湿った暗い牢獄にいた。身動きを取ろうとしたその時、金属のぶつかる音と共に冷たい感触と痛みが手首を掴んだ。見上げてみると、両手首は壁に張り付けられた拘束具によって頭上で一纏めにされている。

「なに、これ……」

必至に拘束を解こうと手首を動かしてみても、無駄だった。ここはどこなのだろう。一体何故こんな場所に?ぼやけた記憶をなぞってみると、先程まで自分は宿のベッドの上にいた事を思い出す。そうだ。確か、あのお菓子とお茶を貰ってから急に眠気に誘われ、意識を失ったのだ。もしかして。やはり隣を見てみるとまだ意識を失っている昴が同じようにそこにいた。星子は心配そうに声をかけた。

「昴ちゃん、大丈夫?ねぇ起きて」

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