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死に星 ―twinkle of death―  作者: 白宮 安海
第二章 ベストフレンド
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4. 塵と屑 4

「俺様は一人でも十分だけどな。行くならさっさと行くぞ」アデスはぶっきらぼうにそう言った。

「じゃあ、僕らは行くよ。何かあったら星子も語りかけて」

「分かった。ディーア、気をつけて」

ディーア達を見送った。星子はどこか心配そうに、しばらく扉の向こうを見つめていた。それから二人は宿の一部屋へと案内をされた。

柔らかな布団の上に、二人で一緒に寝転んだ。昴と共にいるのは心地よかった。ディーアとはまた違う感覚で、一緒にいると勇気を貰えるような、そんな存在だ。

「ねぇ、星子ちゃん。昔のこと、覚えてる?」天井を見上げて呟く。

「ううん、昔のことは全然。覚えているのは私が自殺をしたからこの世界に連れてこられたって事だけ」

「自殺……、そうだったんだ」昴は悲しそうに声を落として言った。その声色の転調に気づいて、星子は昴の方へ体を横に預けると、笑顔を繕った。

「でもね、何で自殺したのかは思い出せないの。というか、かえって思い出せなくてよかったかも。ここの生活も別に嫌じゃないし」

「そっか。ディーア君もいるしね?」

「うん、昴ちゃんは?過去の事、少しは思い出せる?」

昴は一瞬黙って思い出すかのように遠い目をした。

「私、最後に見た景色で覚えているのは、どこかの屋上から見た曇り空だった。それで、誰かと手を繋いでいたの。その人が誰なのかは思い出せないけど、その温もりは凄く暖かった。それとは反対に、曇空はどこまでも遠く、寂しげで、悲しくて、私を置いていくの。私は怖くなって、その手をまたしっかりと握り返した」

「昴ちゃん……」

「もしも、元の世界に戻ったら、その子に会ってみたいな。この髪飾りも、きっとその子と関係があると思うの」

昴は微笑みながら自分の髪に咲く一輪の花に触れた。

「私は、戻れなくてもいい。戻ってもどうせ、私の事を必要としてくれる人なんていないから」星子の表情に暗い影が差したのを見て、昴は言った。

「星子ちゃんは、強いね」

初めて言われた言葉に、目を丸くして昴を見る。

「え?」

「私、星子ちゃんが羨ましい」

「そんな、私なんてそんないいものじゃないから」

星子は、言われ慣れない言葉に困惑し、否定するばかりだった。

「私達は、ずっとここにいる限り友達でいようね」昴は星子の手を握ってそう言った。

温かな言葉に安堵を覚えて小さく笑い、その手を強く、星子は握り返した。

「うん、星が滅んだとしても友達だよ」

と、そこに部屋の中に気の良さそうな宿の主人が入ってきた。

「二人共、長旅で疲れているでしょう。アステリダスト特産の星砂糖のクッキーと、サンティエティーはいかがですかな?」主人の両手の盆の上には、星の取っ手のティーカップと、星型のクッキーの盛ってある皿があった。ティーカップの中の紅茶は、太陽にでも晒されたかのようにきらきらと輝きを帯びていた。

「あ、ありがとうございます」

星子と昴は行儀よく返事をして、目を爛々と輝かせた。主人がテーブルにそれらを置くと、「いただきます」と言ってクッキーを口に含んだ。甘いのにどこか清涼感のある不思議な味が口に広がった。すると、主人はどこか浮かないような顔をして言った。

「ここも昔はいい土地だった。特産に溢れ、人も皆活気づいていた。しかしホッリビスが現れてからは変わってしまった。この街は死んだ。そして我々人間の心も。そうして善良な市民は居なくなっていくのだ。悪い奴らの餌食となって。私はもう疲れた……。ここの生活に」

それを聞いて、星子は食べかけのクッキーを置いて真剣な顔をして言った。

「大丈夫です。ホッリビスなら、私とディーアが何とかします。そりゃ、怖いですけど。でも、私にはディーアがついてるから、きっと何とかなる気がするんです」

「……お嬢さん。やはりあなた方はリンカーなのですね」

驚きを隠せない主人の様子に、星子は小さく頷いた。

「頼りないですけど。でも頑張ってみますから」

主人は心底明るい笑顔を取り戻して朗らかに言った。

「リンカー様、ありがとう。私の街へ来て下さって。本当にありがとう!どうか、この街をホッリビスから救って下され」何度も何度も頭を下げて頼み込んだ。

「は、はい!私には昴ちゃんもついてますから」星子は昴の方へ目をやった。昴は急に顔を赤くしてもじもじとしだした。宿の主人はそれを聞いて更に声を明るくさせた。

「なんと、お友達もリンカー様なのですかな?」

「は、はい」昴は声を小さくして言った。それを聞いて宿の主人は機嫌よく二人に菓子やお茶を勧める。

「ああ今日はなんと素晴らしい日なのだろう!私の宿に二人もリンカー様が訪れるだなんて。さあ、遠慮なく食べてくだされ。これは私のサービスです。お代わりもありますぞ」

「えっ、ありがとうございます」星子はお礼を言って、有難く主人の厚意を受け取って、食べ進めた。主人は気のいい笑顔のまま、部屋を出て行った。


「なんか圧倒されちゃったね」昴は苦笑いを浮かべた。星子の頭が痛み出したのは、その直後の事だった。痺れるような痛みがこめかみ付近を襲う。それから脳内に声が聞こえだした。ディーアの声だった。

「大変だ!星子」

だがそれを聞いた途端、星子は意識を失い、ベッドに倒れ込んだ。心配して声を上げる昴も、同じように意識を失った。


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