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第六十九話 決心

「やっぱり、もう報酬を受け取るのは無理かしら」

「ああ、証拠の魔石がないと無理だろうな……」


 セレーナとリーゼロッテは、先日のゴブリン討伐依頼の報酬について話し合っている。

 わたしは、いつ自分の思いついた話を切り出そうか、迷っていた。

 驚かせてしまうかもしれないから、せめてなるべく自然な形で切り出そう。


「私たち、あの日、倒したゴブリンの魔石を集めずに、そのまま帰ってしまったものね」

「きっとケインたちが拾い集めて、討伐報酬をもらってしまっただろうな……」


「ねえ、みんな! 今度の連休!」


 大声が出た。


(オイ……唐突もいいところニャ)

 

 にゃあ介に突っ込まれるが、もう話し始めてしまったのだから仕方ない。


「連休に、なにか予定あったりする?」


 わたしの質問に、二人は戸惑いながらも、


「いいえ、私は特に」

「私も、本を読むくらいしか予定はない」


 と、答えた。


「そうなんだ」


 少しほっとする。二人とも予定がないのなら、ちょっとは話しやすい。


「どうしたの? 何か考えがあるの、ミオン?」

「うん」

「なんだ? その考えとは」


「あのね、行きたいところがあるんだけど」


「どこ?」

「どこだ?」


 興味津々の二人はわたしの顔を覗き込む。

 わたしは、一度間をとって、深呼吸してから言った。


「スナウ半島。――ドラゴンのいるところ」




   ◆




「何だって?」

「ミオン、何を考えているの?」


 二人とも眉根を寄せ、思案げな表情を浮かべている。

 わたしは話した。


「みんな、悔しくなかった? レッサー・ドラゴンから逃げ回るだけで、まともに戦えなくて」


 ルミナス・ウィザーディング・コンテストの最終試練。

 レッサー・ドラゴンと対峙したときのわたしたちは、「戦い」と呼べるようなものではなかった。

 いや、それどころかもう少しで大参事になるところだった。

 ギリギリで、ブレス軽減魔法「ウワオギ」を発動して事無きを得たのだった。


 スナウ半島。エスノザ先生によると、そのドラゴンが捕らえられたのが、この大陸の東南端に位置するその場所ということだった。


「でもミオン、あれは元々、ドラゴンの目を盗んで優勝カップを取ってくる試練だったのよ?」

「そうだ。レッサー・ドラゴンのブレスも、封じられているはずだった」


 二人は口々に反論する。


「でも!」


 わたしは言う。


「それでいいの? レッサー・ドラゴンには一生歯がたたない。そんなんで悔しくないの?」


「そ、それは……」

「そうだが……」


 言いよどむ二人。


「わたし、勝ちたい」


 わたしはきっぱり、言い放った。


「レッサー・ドラゴンに勝ちたい!」


「ミオン……」

「…………」


「だから、行くの。戦いを挑みに」


 わたしは続ける。


「実はこの間ギルドに行ったとき、確認したんだ。レッサー・ドラゴンの討伐依頼も出てる。スナウ半島近くの炭鉱で、炭鉱夫が襲われたんだって」


 わたしは二人の目を順に見る。


「……だめ?」


 セレーナとリーゼロッテは、考えこんでいる。

 しばらくして、


「いいわ、わかった!」


 セレーナが言った。


「やってみようじゃない。それくらいできないと、父の仇には勝てないだろうし」


「父の仇?」


 リーゼロッテが不思議そうな顔をする。


「私、父を殺した相手を倒すのが目標なの。詳しくはまた今度話すね」

「そうなのか……」


 あごに手をあて、うつむくリーゼロッテ。じっと考えこんでいる。


「ええい、どうにでもなれだ。私も行く」


 リーゼロッテは言った。


「今の私では大した戦力にもならないかもしれないがな」

「リーゼロッテ!」


 わたしが抱きつくと、リーゼロッテは照れくさそうにポリポリと頭を掻いた。


「よーし、そうと決まったら!」


 わたしは張り切って言った。


「特訓よ! ……まずはウワオギ! 三人ともあの魔法を使えるようにならなきゃ、話にならないわ」


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