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第六十八話 休暇

「もう、セレーナってば、昨日ははずかしかったよ……」


 わたしは白魔術の授業中、隣の席のセレーナに話しかけていた。


「あら、なにが?」


 全然なんのことだかわからない様子のセレーナ。あんなにキメッキメに二つ名を名乗ってたくせに……。


「……まあいいや。でも、あの辺一帯、焼け野原になっちゃったけど、大丈夫かなあ」


「オホン。そこ、私語は慎むように」


 教室の前で授業を行なっているエスノザ先生に、そうたしなめられる。


「あ、すいません」


「さて、今日の授業はこれで終わりですが……」


 エスノザ先生は、後ろ手をして教壇の横に立つとこう言った。


「来週からの休暇中も、魔力を練る練習は忘れないように。それからもちろん、宿題もどっさり出るでしょう」


 ええー、という声が教室のあちこちから上がる。


「休暇って?」


 わたしはセレーナに訊ねる。


「あら、ミオン知らなかったの? 掲示板に予定表が書いてあったわ」

「あはは……全然知らなかった」


「それから」


 エスノザ先生は続ける。


「魔法を使うな、とは言わないが、やりすぎないように。ルミナスの生徒である自覚をもってください」


 そういう先生の目は、わたしをじっと見ている気がした。


「あ、あれ? もしかして何かばれてない?」


 どきどきしながら、わたしは作り笑いを浮かべた。


「それでは終わります」


 エスノザ先生はそれだけ言うと、シルクハットをちょんとさわって、教室を出ていこうとした。

 わたしは急いで立ち上がる。


「どこへ行くの?」

「ちょっと先生に訊きたいことがあるの」


 そう言ってわたしは扉の向こうに消えていくシルクハットを追った。




   ◆




「どうしようかな……」


 わたしはベッドに倒れこむ。

 前の世界で学校が連休になったりしたら、飛び上がって喜んだものだ。

 しかしこっちの世界では、魔法の授業を何日も受けられないのが寂しいくらいだった。

 周りの話を聞いていると、連休を実家で過ごす生徒も多いらしい。


(ミオンには帰るべき実家がないからな。しかしセレーナかリーゼロッテの実家にでも遊びに行けばいいではニャいか)


「うーん」


 じっと天井を眺めていると、にゃあ介が言った。


(何を悩んでいる、ミオン?)


「にゃあ介。わたしね、大会の後からずっと考えてることがあるんだけど」

(ふむ?)



 わたしは、自分の考えをにゃあ介に話した。



 にゃあ介は黙って話を聞いたあと、こう言った。


(それで、エスノザに質問していたのだな……おもしろいではニャいか。ワガハイも賛成だ)

「そう思う? 危なくないかな」


 わたしは、少し不安になって訊いた。


(枝先に行かねば熟柿は食えぬ。成功には困難が伴うものニャ)

「……よくわかんないけどわかった。明日、二人に話してみる」


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