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第六百二十五話 神の力

「何故だ! どうして私たちを狙う!?」


 リーゼロッテが叫ぶ。


「宿命だからじゃ。神域から返すわけにはいかん」


 神は、詠唱を続ける。


「それとも……今からでも構わん、お前の旧極魔法でこの世界を造り変えるか?」

「なぜミオンなの!? そんなにこの世界が気に入らないなら、自分でやればいい!」


 セレーナが叫ぶ。


「言っただろう。私は曲がりなりにもこの世界の神じゃ。直接手を下すわけにはいかんのだ」


「く……!」


 リーゼロッテが、魔法を放った。

 放たれた炎弾は、神めがけて飛んでいき――神の顔の前でフッと消える。


「神に手を上げるなど、畏れ多きこととしれ」


 神が魔力を開放する。


ザ・ゲート


 わたしたちの眼前に小さな黒い球体が生まれ、それが急速に大きくなる。


 まずい。間に合わない。


 あれに触れたら、終わりだ――


 次の瞬間、何かがわたしの身体にぶつかってきた。


「うっ」


 セレーナだった。セレーナが、わたしとリーゼロッテを突き飛ばしたのだ。


「セレーナ!」

 

 わたしは石畳を転がりながら、叫ぶ。


 セレーナなら大丈夫。


 いつものように、回転しながら宙に舞って……

 魔法を華麗に避けて、着地を決めるんだ。


 そう、ぜったい大丈夫だ。



 だが、大丈夫ではなかった。



 セレーナの横腹に、えぐられたように穴が開いた。




   ◆




 セレーナは血だまりの中に倒れている。


 わたしとリーゼロッテは、必死で回復魔法を唱えている。


「セレーナ、セレーナ!」


 セレーナは何も答えない。

 横腹からはとめどなく血が溢れてくる。


 ぽつり、とリーゼロッテが言った。


「――だめだ」




   ◆




 わたしはセレーナを見つめている。



 何が何だかわからなかった。

 わかりたくなかった。



 そんなはずない。

 そんなことがどうして起こり得る?



 けれど、現実だった。




 セレーナが死ぬ。




   ◆




「やれやれ、避けるから痛いのだよ」


 神が言う。


「次は避けてはいけないよ」


 神がまた詠唱を始める。


「あれは……ま、また旧極魔法?!」


 リーゼロッテが言う。


「神の魔力は無尽蔵なのか……?」


 大気が振動を始める。

 空気中に火花が散り、オゾンの匂いが鼻をつく。

 外宇宙の一部をここへ持ってくる、ザ・ゲート


「み、ミオン……」


 わたしは詠唱を始めている。


 旧極魔法は使えない。

 詠唱に時間がかかり過ぎるし、あれをぶつけ合ったら、リーゼロッテを巻き込んでしまうかもしれない。


 旧極魔法なしで、わたしに使えるのは――。


「加速魔法:<スピード>」


「この期に及んで加速魔法?」


 神は笑う。

 わたしは続けて唱える。


「加速魔法:<スピード>」


 神の顔から笑みが消える。


「倍がけだと?」


「加速魔法:<スピード>、加速魔法:<スピード>、加速魔法:<スピード>、加速魔法:<スピード>」


「!」


 神が言う。


「自滅行為だ。愚かな……」


 もう、身体が持たない。


 でも、いい。

 命なんて惜しくない。


 何もかもどうでもいい。

 セレーナが死んじゃったら、何も意味なんてない。


 こんなことなら、初めから何もしなければよかった。

 旧極魔法なんて、放っておけばよかった。


 そのとき、声が聞こえた。

 静かで、たのもしい、いつものにゃあ介の声。


(ミオン)


 にゃあ介……。


(ミオン、やけになるな)


 ありがとう、にゃあ介。


 でも、もう遅いよ。どうしたらいいっていうの。


(ワガハイが力を貸す)


 突然、身体に力が湧いてくる。


「更に加速した? どうなっている!?」


 神は、そして言う。


「……愚かなりミルヒシュトラーセ。人間の側につくというのか」




「神の側でも人間の側でもニャい」




 にゃあ介の声が響く。




「ワガハイは、ミオンの側につく」



 次の瞬間、ふっと視界が真っ暗になった。


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