第五話 冒険者ギルド※挿絵あり
「冒険者ギルドへようこそ。私は、案内役のサマンサよ……あら、ずいぶん可愛らしい冒険者ね」
酒場に入るなりカウンターの女の人が言った。サマンサと名乗ったその人は、グラマラスで、女のわたしが見ても、かっこいい大人の女性だった。
「あの、お供を雇いたいんですけど……」
「ふーん。お金は持ってるの?」
「……これで、いいですか?」
わたしはポケットから、さっきの化け物から現れた宝石を取り出した。
「『ゴブリン』か。いいわ、じゃあ、あの中からお供を選んで」
サマンサさんが指差す先には、いくつかのテーブルがあって、そこで多種多様な人達が話したりお酒を飲んだりしていた。
剣を腰にぶら下げていたり、弓を背負っていたり、みんなとても強そうだ。中には、黒いマントを頭から羽織った、あやしげな人物もいる。
あれって、もしかして……魔法使いとかだったりするのかしら。
わたしはにゃあ介相手にラノベに出てくる呪文を叫んでた日々を思い出す……「我求めん、汝の業天に麗ること能わん……ダークフレイム!」
これはわたしの好きなラノベ「ザ・ダーク ─闇に舞い降りし漆黒の堕天使─」の主人公の決めゼリフ。我ながら恥ずかしいことしてたなあ。
……にゃあ介の中二病だって、そのせいかも。
そんな風に考えて、トクンと鼓動が高鳴るのを覚える。
いつか心の底に押し込めた夢がちらりと顔をのぞかせる。
ううん、期待するのはやめよう。もう諦めたんだから。
ざわつく胸を押さえつけ、わたしは一人の男性を指さして言った。
「あの人!」
「だめ。その人Dランク」
サマンサさんが指で×をつくる。
「えー、じゃあ、あの人」
別の人を指さすと、
「その人はCランク」
「どの人ならいいの?」
わたしは膨れて言った。
「あんた、どうやって選んでるのさ」
「顔よ顔。顔に決まってるでしょ」
「ふーっ」
サマンサさんはため息をついて、
「あのね、『ゴブリン』じゃ、Eランクがいいとこ。それもおまけしてね」
そのときだった。酒場の奥で、一人の男が立ち上がった。
「俺、行ってもいいすよ」
「ラウダさん。もう、お人好しなんだから」
ラウダさん、と呼ばれたのは、皮の鎧を着こんだ男性で、武骨だけど優しそうな風貌だった。
「丁度、今日、明日と空いてるんだ。お嬢ちゃん、俺でようがすか?」
「お嬢ちゃんとは失礼ね。美音って名前があります」
「これは失礼。ミオン殿、私でよろしいかな?」
うん、この人ならまあまあね。
「いいわ。あなたに決めた!」
「偉そうに。ラウダさんはDランクなのよ」
「Aじゃないの? がっかり」
「こら!」
「わはは! 面白い娘さんだ」
「どういたしまして」
わたしは腰を下げて軽くお辞儀した。
「ところで、一体、どんな目的で仲間を探しているんです?」
「あのね、宿賃を稼ぎたいの」
「宿賃か。わはは!」
わたしは何が面白いのかわからないまま、ラウダさんを引き連れて、また山へと向かったのだった。