表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
547/594

第五百四十六話 襲撃

「くるぞ!」


 ジェイクが叫ぶ。


 城壁の上から、魔物の頭がつき出る。


「……! 本当に魔物がここまで来るなんて……!」


 誰かが呟く。


 魔物たちは、城壁を乗り越えて次々と敷地内へ入り込もうとしている。

 ゴブリン、ゴブリンガード、レッドリザード……。


 と、いきなり、城壁の上のゴブリンガードの、頭の右半分が吹っ飛んだ。

 ゴブリンガードはそのまま城壁の下へ落ちる。


 メティオのパチンコ弾が炸裂したのだ。


「――すごい!」


 わたしは右翼から、城壁中央付近にいるイェルサの稲妻の方を見やりながら言う。

 メティオは何かぶつぶつ言いながら、またパチンコを構える。


「身体強化魔法を使っている」


 隣でリーゼロッテがそう言いながら、自身にも強化魔法をかけ始める。


 わたしは遠くの方、イェルサの稲妻よりも左へ目を向ける。

 と、炎の弾が城壁向かって飛んでいくのが見える。

 左翼でも攻撃を開始したようだ。


「あれは……ヒネック先生の炎の魔法?」


 さすが先生。炎で敵を撃ち落としているんだ。

 さらに、白い光も見える。


「エスノザ先生も攻撃しているみたいね」

「白魔法による攻撃なら、きっと、聖なる攻撃魔法だね」

「えっ、白魔法に攻撃魔法があるの?」


 チコリが驚く。


「そっか。チコリたちはまだ習ってないんだ。あのね、聖なる攻撃魔法っていうのは……」


(説明している場合じゃニャいぞ)


「みんな、用心しろ」


 リーゼロッテが弓を引き絞りながら言う。


「こっちもくるぞ」




   ◆




 リーゼロッテの放った矢は、城壁から顔を出したゴブリンの鼻っ面に、まともに命中した。


「いいぞ、リーゼロッテ! 全部仕留めちゃえ」


 リーゼロッテは連続で矢を放って、敵を倒していく。


 しかし敵は、数にものをいわせて、次から次へと登ってくる。

 リーゼロッテの弓だけでは追いつかない。わたしとセレーナは魔法を唱え始めた。


「我求めん、汝の業天に麗ること能わん……ダークフレイム!」


 チコリ、リーズ、セタ王子も魔法攻撃を始める。


 六人で、城壁を登ってくる魔物たちを次々と撃ち落とす。

 左の方、城壁正面で戦っている、ジェイクの声がした。


「やるね! 導く三日月クレセント・ロペラ! 僕たちも負けてられないぞ」


 メティオが打ち漏らした魔物が、敷地内へ落ちてくる。

 ジェイク、ルーベンダイク、ジュナがそれを待ち受ける。


「はっ」


 ルーベンダイクが、魔物を槍で薙ぎ払う。

 四、五匹の魔物が、メリーゴーラウンドに乗ってるみたいに、ぐるりとぶん回され、絶命する。


「すごい……!」


 改めて長い槍の威力を知る。「突く」より「はらう」、「たたく」とルーベンダイクは授業で言っていた。


 続いて、ジュナが、鞭をしならせる。


「ヤァッ!」


 太く頑丈な鞭がゴブリンガードに巻きつくように強襲する。

 ――かと思うと、次の瞬間、音速を超えた衝撃波を伴って、その身体を両断していた。


「うわ、ジュナさんの鞭、やばっ」


 そしてジェイクの鋭い剣が、残りの魔物の首を跳ばしていく。


「ほっ! それっ!」


「強い!」


 わたしは、魔法でどんどん魔物を迎撃しながら、イェルサの稲妻の流れるような動きを見ている。


(無駄のない連携ニャ。Sランク冒険者の名は伊達ではないニャ)


 にゃあ介も感心している。


 わたしたちのいる右翼も、やがて打ち漏らした敵が敷地内へ入り込み始める。


「みんな、次はわたしたちの番だよ!」


 わたしとセレーナは、剣を抜くと、魔物たちめがけて走り始める。



「えいっ」

「やっ」


 セレーナと二人で、入り込んだ敵を撃破する。

 リーゼロッテは遠隔で援護を行う。


 リーズ、チコリ、セタ王子も、剣を取って戦う。

 三人とも、素晴らしい働きだ。

 とくにリーズの大剣は、敵を二、三匹いっぺんに八つ裂きにしてしまう。


 ワーッ!!!


 どこかで歓声が上がった。


「な、何?」


 振り返ると、校舎の窓から、生徒たちの姿が見えた。


「すごいぞ!」

「やれ! もっとやれ!」


 生徒たちは、城壁で起きている戦いを見て、あらんかぎりの応援の声を送っている。


「――学校を守らないと」


 わたしたちは、戦闘を続ける。


 夢中になって倒していると、戦意喪失した一匹のゴブリンが城壁伝いに走っていくのに気づかなかった。


「一匹逃げた!」


 リーゼロッテの声で気づく。


 ――まずい。校舎の方へ逃げられたら、厄介だ。


「ま、まてっ」


 わたしがそのゴブリンを追いかけようと、走り始めたときだった。


 後方から、何かが、ブンブンと音を立てて飛んできた。

 それはそのままゴブリンに命中し、頭が吹っ飛んだ。


「斧?」


 ゴブリンの顔面に命中して、地面へ刺さった斧。わたしはそれを、ぽかん、と見つめる。


 どすどす、という、聞き覚えのある足音。


「ガハハ。遅くなったな。ワシも参戦させてもらうぞ」


 門番のドワーフの、頼もしい声が響いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ