第五百四十一話 特別実習終了3
続いて雑貨屋へ行ってチコリと合流すると、そこへリーゼロッテとセタ王子もやって来た。
少し遅れて、リーズも現れる。
「終わっちゃったね~」
「ああ」
「そうですね」
リーゼロッテとセタ王子が、どこか寂しそうにつぶやく。
「楽しかったな~!」
チコリが言う。
「うん。いい経験にもなったね」
リーゼロッテは、
「非常に有意義な体験だった」
とうなずいて、
「明日からはまた授業だな」
そんな話をしながら、皆で通りを歩く。
「ん?」
わたしは商店街の先に目を凝らす。
店先に、お婆さんと、一人の少年が立っている。
「あれ、うちの生徒かな?」
わたしが言うと、皆もそちらを見る。
「そうみたいだね」
近づいていくと、少年は、よく見知った顔だった。
「ケインだ」
ケインは、苦虫を嚙み潰したような顔で、うつむいている。
老婆は唾を飛ばして、なにかまくしたてていた。
「ははあ、何かしでかして、店の主人に怒られてるな」
わたしは店の看板を確認する。
「『シュルゲーン・占いの館』……。ケインは占いのお店で働いてたんだね」
お店の人は、怒り心頭と言った感じで、
「……お店の物は大事に扱えと言ったのに!」
ケインを叱責する。
「……なに、成績を悪くつけられると困る? そんなのあたしゃ知ったこっちゃない!」
それを聞いたケインの顔がさらに歪む。
「あーあ、かわいそうに」
わたしたちは、哀れみの視線を向け、その場を後にした。
◆
魔法学校。
ルミナスの中心に位置する、この地を象徴する建造物。
各地から魔法を学びたいという生徒たちが集まってくる。
特別実習を終え、わたしたちは再びこの学校へ登校し、学んでいる。
「みなさん、実習おつかれさまでした」
教壇のショウグリフ先生が話している。
「学外での仕事はどうだったかな? 良い刺激になっただろうと思う」
しばらく生徒たちにねぎらいの言葉をかける。
それから、
「魔法を習っただけで満足して、宝の持ちぐされになってはいけない。しっかりと実地で活用できるようになる、そのために職業実習をしてもらったわけです」
おほん、と咳ばらいをして、
「それではこれまで学んだことを、少し復習してみよう……」
先生は続ける。
「魔法には、白魔法、黒魔法、時の魔法などの種類があり――」
ああ、また帰ってきたなあ。
わたしは授業を受けながら、そう感慨深く思うのだった。
◆
数日が経ち、ようやく授業にも慣れてきたころ、驚きのニュースが飛び込んできた。
それは、いつものようにミム・マム双子の姉妹によって知らされた。
「ミオンさん~、聞きました?」
登校して、校庭を歩いているわたしに、二人が寄ってきて話す。
やれやれ、またうわさ話か。ミムマムは、いつもどこから情報を仕入れているんだろう?
わたしが苦笑していると、二人は、
「冒険者ギルドで噂になってるみたいなんですけど~」
そう言う。
「え、ギルドで?」
わたしは興味をそそられ、訊ねる。
「なになに?」
「えっとですね~……」
二人の話を聞いて、わたしは驚きの声を上げた。
「ええっ、魔物が消えた?」
 




