第五百三十四話 楽な案件
ガーリンさんの小屋を出ると、みんなそれぞれの職場へと散っていく。
わたしは、チコリのお店のことが気になりながらも、冒険者ギルドへ向かう。
ギルドへ着くと、リンコさんとマシャーミンさんが迎えてくれた。
「おはようございます!」
「おはようございます! ミオンさん」
「おう、おはよう。……さっそくなんだが、今日は、ちょっと洞窟の方へ行ってもらいたい」
「洞窟?」
マシャーミンの言葉にきょとん、としていると、
「初心者向けクエストの、護衛依頼が入ったんだ。君、たしか冒険者登録してただろう。ランクは?」
「は、はい。一応Cランクは取ってます……」
「十分だ」
マシャーミンさんはうなずいて、言う。
「急な依頼でな。リンコ、説明をたのむ」
「はい。該当クエストはワイナツムの洞窟、地下2階のボギートードの魔石5個の収集」
リンコさんが依頼書を見ながら話す。
「そのクエストに向かう、初心者冒険者を護衛するのが、今回の依頼です」
「初心者の護衛……わたしが?」
わたしがぽかーんと口を開けていると、マシャーミンさんが言った。
「……まあ、これも勉強だ。行ってこい」
◆
「でも、なんだか得しちゃった!」
わたしは依頼主との待ち合わせ場所へ向かいながら、言う。
(なにが得なんニャ?)
「だって……魔物狩りをするだけのお仕事なんて!」
わたしはクルクル~、と小躍りする。
「外で身体を動かすのは、久しぶりだなあ。ワイナツムの洞窟の地下2階くらいなら、気楽にいけるし」
(ほんとにラクな案件だといいがニャ……)
「こんなにうってつけの仕事ないって」
わたしは鼻歌を歌いながら、歩く。
ワイナツムの洞窟があるのは、学園都市から少し離れた高台だ。
そのふもとに、依頼主との待ち合わせの場所はあった。
「あっ、あの人かな? すみませーん」
わたしは手を振りながら近づいていく。
依頼主の背はそれほど高くない。わたしと同い年くらいじゃないかな?
「護衛クエストの依頼を受けた、ミオンと言います」
わたしが声をかけると、
「なんだ?」
と依頼主である、男の子が振り返る。
「げっ」
ぶすっとしたその顔を見て、わたしは思わず固まる。
「けっ、ケイン……」




