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第五百三十三話 販売開始

「結構、数はそろったね」


 朝。


 わたしたちは、ガーリンさんの見張り小屋に集まって、話し合っている。

 机の上には、たくさんのまものポーチ。


「よくまあ、これだけ用意したな!」


 ガーリンさんも感心して言う。


「大変だったよ」


 わたしは笑う。

 あれから数日かけて、皆で、まものポーチをできるだけ用意したのだ。


「今日からいよいよ、店頭に置いて販売開始だね」

「みんな、手にとってくれるかなぁ」


 チコリはなんだか不安な様子。

 店長さんに無理言ってお願いした手前、失敗できないというプレッシャーを感じているみたい。

 リーズがチコリの背中を叩く。


「大丈夫よ、チコリ。ぜったい売れるって!」

「そうですよ。このガーゴイルのまものポーチなんて、最高ですよ」


 セタ王子が、ひとつを手に取って言う。

 チコリが作ったそれは、ガーゴイルがかわいくデフォルメされている。


「ああ、口の中が小物入れになっているなんて、いいアイデアだ」


 リーゼロッテも言う。


「がま口みたいで、小銭なんか入れるのにぴったりだよね!」


 わたしも同意する。


「うん!」


 チコリが、だんだん元気を取り戻してきた。


「そうだね。きっと大丈夫だね。みんな、こんなにかわいいんだもん」


 拳を握って、ふんす、と鼻息荒く気合を入れるチコリ。


「ゴブリンポーチ、ワーベアポーチ……どれもとっても素敵だわ」

「これなんて、最高!」


 机の上の、ひときわ目を引くぬいぐるみを持ち上げる。

 そのぬいぐるみの真ん中には、大きな目玉がデザインされ、周りには何本もの触手が垂れ下がっている。


 セレーナが言う。


「モノアイ・クリーパーね。たしかにこれは、最高傑作かも」


「ねっ、ミオン?」


 チコリが無邪気に言う。

 モノアイ・クリーパーのぬいぐるみをチコリから受け取ったわたしは、


「こんなのも作ったんだ……」


 無表情でぬいぐるみを見つめる。


「丸っこいから、たくさん物を入れられるの。……それに」


 チコリがぬいぐるみの説明をしてくれる。


「それだけじゃないんだよね。お腹の所を押すと……」


「ゲェ~」


 モノアイ・クリーパーが、声を出す仕組みだ。


「すごいアイデアよね」

「ええ。絶対にウケますよ!」


「ギュー」

「ゲエー」


 みんな、順にお腹を押して盛り上がる。


「…………」


「どうしたの? ミオン」


 わたしは、触手だらけのモノアイ・クリーパーが鳴くのを見つめながら、自分に言い聞かせるのだった。


「うん、いける……いけるよね……」

「ゲッゲッ」


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