第五百三十話 休日の過ごし方1
「あー、ひどい目にあった」
二人にさんざん追い回されたわたしは、ハァハァと息をつく。
「あんたが悪いんでしょ」
「ミオンが悪いんだから」
リーズとチコリが言う。
「ごめんごめん。さて、気を取り直して……」
わたしは伸びをして、
「どこへ行くんだっけ?」
「ガーリンさんのところへ行くんでしょ」
セレーナが言うと、リーゼロッテが続けて、
「最近会っていないし……、それに、言っていただろう? セタ王子が帰ってきたら、歓迎してやらんとな、と」
「えっ、僕のことをですか?」
セタ王子は驚いて、
「ありがたいなあ。ガーリンさんは、本当に優しい守衛さんですね」
その言葉に、皆うなずく。
「じゃあ、行こう!」
わたしたちはぞろぞろと歩きだした。
◆
「おっほう! みんな、よく来たな」
ガーリンさんは、わたしたちを笑顔で出迎えてくれた。
「セタ王子! 元気だったか?」
訊かれたセタ王子は、うれしそうに、
「ありがとうございます。おかげさまで元気です。ガーリンさんは、相変わらずですね」
「はっはっはっ。ワシは元気だぞ」
ガーリンさんは胸を叩いて、
「さあみんな、入った入った!」
と見張り小屋の中へ案内してくれる。
「王都の方はどうだ? 困ったことはないか?」
ガーリンさんのふるまうお茶をいただきながら、わたしたちは話している。
「そうですね。ユビル王はよくやっています。亡くなったユンヒェム兄さんの分まで……」
「お兄さんのことは残念だった……」
ガーリンさんの目は、うるんでいる。
「ユビル王が王になったときは、これで少しは平和になると思ったんだがな」
「きっと、平和になります。ユビル王の代に。ユンヒェム兄さんも、きっとそれを望んでいると思います」
目をゴシゴシとこすりながら、ガーリンさんは、
「そうか……そうだな。よし! ワシはユビル王の味方だ!」
ドンと胸を叩く。
そんなガーリンさんを見て、セタ王子は微笑むのだった。
◆
「ところでお前さんたち、特別実習はうまくやっとるか?」
ガーリンさんが訊ねる。
「うん、順調だよ。ね?」
わたしが言うと、みんなうなずく。
「そうかそうか。みな、どこで働いとるだ?」
「わたしは、冒険者ギルド。セレーナは食堂で、チコリは雑貨屋さん。リーゼロッテとセタ王子は魔法具工房で……」
わたしはざっと説明する。
「リーズはね、ハロルドさんの武器屋で働いてるんだよ!」
「ほう、ハロルドのところで?」
ガーリンさんはリーズを見て、
「ハロルドとは仲良くやっとるのか?」
と訊く。
リーズは、
「ま、まあなんとか……」
と答える。そんなリーズにわたしはツッコむ。
「こないだ、店頭で喧嘩してたよね?」
「ちょ、ちょっと!」
慌てるリーズに、
「喧嘩じゃと?」
ガーリンさんがジロリと睨む。
リーズがコップを持ったまま口をパクパクさせていると、
「ぶっ!?」
ガーリンさんがリーズの背中をバン! と叩いて笑う。
「わはは! まあ、あやつはああいう男だからの!」
「けほっ、けほっ!」
リーズがむせる。
「あいつが喧嘩をふっかけるなら、お前さんを気に入った証拠さ」
「え……」
戸惑うリーズ。
そんな彼女をよそに、
「みんな順調そうでよかった。ワシもうれしいよ」
ガーリンさんはうんうん、と頷く。
そんな中、
「うーん……」
とむずかしい顔をしているチコリ。
「チコリ?」
「どうした? お前さんは雑貨屋で働いとるんだったな。順調じゃあないのか?」
「うん、そうなんだけど……」