第四百九十九話 戦闘二日目
翌日の朝、再び戦闘が始まった。
……だが、わたしたちは王都軍の遥か後方にいる。
昨日の大勝を見た貴族たちが、
「今日は、我々が先陣を務める!」
と息巻いて、戦に出陣していったのだ。
それで冒険者隊を含む数隊が、しんがりを任されている。
「まったく……勝てると踏んだとたん、これだよ」
わたしは呆れてつぶやく。
周りにいる他の冒険者たちも、
「いいところを持っていきやがって!」
「俺のハンマーの出番はどうなったんだよ!」
ぶつぶつ文句を言っているようだ。
「好きにさせておきましょう。幸い、戦力はこちらが優位のようだし」
セレーナが言う。
「ああ。どうみても王都軍優勢だな」
リーゼロッテが頷く。
わたしたちは戦いを見守る。
狡賢い貴族の隊といえども、さすがは訓練された兵士たちだ。
一矢乱れぬ陣形で、敵の魔物たちを撃破していく。
魔族軍の数は多いものの、統率が取れていない。
闇雲に突撃して来るだけなので、貴族たちの隊は難なく敵を斥けることができているようだ。
リーゼロッテが言った。
「このまま行けば、昼には決着がつくだろうな」
◆
日が高く昇った、正午ごろ。
グランパレス軍は、敵を圧倒していた。
王都軍に押された魔族軍は、じりじりと後退し始めている。
「大勢は決したな」
リーゼロッテがつぶやく。
「うん。心配はなさそうだね」
わたしは戦場を見つめる。
前線をめざして、広野の真ん中を駆けていく隊がいる。
中央には、黄金の鎧に深紅のマント。ユビル王だ。
ユビル王のすぐ前を、一人の兵士が駆けている。
その兵士は、勇猛に敵陣へ切り込む。
「あの人……」
以前、王宮の軍議室で姿を見たことがある。
王直属の騎士団長、ラウル=ヴァルトシュタインだ。
「うわ! 強い!」
ラウルの剣が閃くたびに敵が倒れる。
鎧に跳ね返る矢も気にせず、彼は猛進し、王の前の道を切り開いていく。
ユビル王は剣を掲げる。
「このまま一気に片をつける! 続け、皆の者!」
王は、機とみて、王自ら隊を率いて突撃する。
王が高く掲げた剣が陽光を浴びて輝く。
その雄々しい姿に兵士たちは歓声を上げる。
「――突撃!」
王の声が戦場に響き渡ると、土煙を巻き上げながら貴族たちの隊も後に続く。
地響きと咆哮が一体となり、大地を揺るがす。
敵軍は一歩、また一歩と下がり、隊列は崩壊の兆しを見せる。
一匹が背を向けて逃げ出すと、それが連鎖となり、魔物たちは、散り散りに逃げ出す。
「決まったな……」
かろうじて保たれていた均衡が破れ、魔物の軍は総崩れとなった。
戦意を失ったゴブリンやオークたちは四散する。
無秩序な退却だった。
恐怖に駆られた彼らは、まとまりを欠き、我先にと逃げ惑う。
重なりあい、踏みつけ合う魔物たち。
勝利は目前。
誰もがそう思ったとき、突如、戦場の中央にまばゆい閃光が走った。
目を焼くような光が一瞬、全てを白に染め上げる。
「!? いま、ピカッ、て……」
次の瞬間、
ドオォォォォオオオォォォン!!!
轟音と共に巨大な爆発が巻き起こる。
重く、深く、地平線まで響き渡るような音は、骨に響いた。
「うわ!!」
衝撃波が四方に広がり、土煙と炎が戦場を覆い尽くす。
兵士たちが、魔物たちが、敵が、味方が、まるで紙切れのように宙を舞い、吹き飛ばされる。
兵や魔物が密集していた広野の一部が、一瞬にして焦土と化す。
爆発の威力で無理矢理えぐりとられ、焼け焦げた灰が降り注ぐ。
歓声は悲鳴に変わる。
「何が起きたの?!」
だが、誰も答えない。誰も何が起きたのか、理解できなかった。




