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第四百七十九話 セレーナの別邸での食事

「それでね、セレーナさまたちが優勝、わたしたちが準優勝になったの!」


「ほほう、それはまた……」

「素敵なことだわ、チコリ」


 チコリは料理を食べるのも忘れて、魔法学校での出来事をユリナとバートに聞かせている。


「チコリとセレーナ様、二人お揃いで入賞なんて、私もとても誇らしいですわ」


 ユリナが小さく手を叩く。

 チコリは、えへへと笑う。


「チコリはもう完全にこの家の家族みたいだね」


 わたしが言うと、


「ふふ、そうね。さっきもユリナがチコリを抱きしめている姿は、ほんとの親子みたいだったもの」


 とセレーナ。


「セレーナ様も、小さい頃のように抱きついて頂いて構わないんですよ」

「ちょっと、冗談はやめて、ユリナ」


 いたずらっぽく笑うユリナと恥ずかしそうにするセレーナを見て、


「はっはっ」


 と、バートもとても愉快そうだ。


 ユリナがこちらを見て、訊ねる。


「ミオンさん、料理のお味はいかがでしょうか」


 わたしは、


「もぐもぐ!(本当に美味しい!)」


 と、即答する。


「もぐもぐ、もぐ!(とくにこの、お肉!)」


 頬張りながら話す。


「もぐ、もぐ、もぐ!(焼き立てのパンとめっちゃ合う!)」


 お肉はジューシーで、口に入れると旨味が広がり、肉汁が溢れ出す。

 焼き立てのパンは、外はパリッと、中はふんわりとした食感。

 これでもかというほどの肉汁と、焼き立てパンの香ばしい匂いが最高にマッチした、贅沢な組み合わせだ。


「今日のために、奮発してメジャロス・バッファローのお肉を仕入れたんです」

「もぐもぐもぐもぐ!(パンとお肉が互いを引き立て合ってる。さすがユリナさん!)」


 わたしはユリナの料理の腕を褒めたたえる。

 「もぐもぐ」としか聞こえなかったかもしれないが。


 わたしたちの食事の様子を見て、ユリナとバートは目を細める。


「みなさんと食事をするのは、久しぶりですね」

「とても楽しい時間です」


「ね、ね、話の続きを聞いて!」


 チコリが我慢できなくなって、身を乗り出す。


「はいはい、そうでしたね」


 ユリナたちは笑う。


「さあ、続きを話して、チコリ」

「ゆっくり聞こうじゃないか」




   ◆




 食事を終え、わたしはふかふかのベッドに飛び乗る。


「ふ~、もー動けない!」


 わたしはベッドの上であおむけになり、腕を伸ばす。


「チコリったら、食事の間じゅう、しゃべりっぱなしだったね」

「ミオンは食べっぱなしだったニャ」 


 セレーナの別宅には、たくさんのゲストルームがあって、わたしは一人部屋を使わせてもらっている。

 リーゼロッテや、チコリ、リーズの分の部屋もあって……改めてすごいお屋敷だ。


「ふふふ、この素敵な部屋を独り占めなんて贅沢だなぁ」


 なんてつぶやきながら天井を見つめていると、


 とすっ、


 とにゃあ介が上に乗ってくる。

 わたしの胸の上で、香箱座りをするにゃあ介の頭を撫でる。


「今はぬいぐるみだから、軽くていいね。前の世界じゃ、けっこう重くて大変だったよ」


 そう言うと、


「ワガハイはスリムだから、重くなどなかったニャ。ミオンこそ、山ほど食べていたけど、大丈夫ニャのか?」

「む」


 わたしは、ちょっと厚くなってきたお腹の肉をつまんでみる。


「……大丈夫じゃないかも」

「ほら見るニャ」


 にゃあ介が大きなあくびをする。


「ふぁ~……、明日から、ダイエットするもん」


 わたしもつられて大あくびをする。


 久しぶりの王都。久しぶりのセレーナの別邸。

 静かな夜だ。窓から見える空には、無数の星が輝いている。


 ごろごろという、にゃあ介の声を聴きながら、幸せな気分で眠りについた。


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