第四百七十七話 大きな動き?
セタ王子と別れ、城を後にしたわたしたち。
久しぶりの王都を、のんびり歩く。
王子たちは、セレーナの別邸まで馬車を出す、と言ってくれたのだが、わたしたちはあえて歩いていくことにした。
王都の街並みを眺めながら歩く。
「やっぱり王都は華やかだね」
わたしは、ふと思い出して、
「ところで、ユンヒェムが言ってた、ごたごたしてるっていうのは、どういう意味だろう?」
そう言うと、
「さあな」
とリーゼロッテ。
「王位の継承関係でごたついているのかもしれないし……」
彼女は顎へ手をやる。するとにゃあ介が、
(グランパレスで何か大きな動きがあるということかもしれニャい)
「えっ?」
わたしは訊き返す。
「なんなの、大きな動きって?」
(知らニャい。適当に言っただけニャ)
「なによー。それ」
わたしが言うと、リーゼロッテは、
「とにかく、一国の王子がごたついているということは、何かあるのかもしれん」
「そうね」
とセレーナ。
「けれど、王族でもないわたしたちが、あれこれ考えたってわからないわ。今はとりあえず休息しましょう?」
「うん」
わたしは大きくうなずく。
考えても分からないことを、考えても意味がない。脳のリソースの無駄だ。
セレーナの言う通り、今は休息、休息……。
「セレーナの家の、ふかふかベッドで!」
むふふ。想像しただけで待ちきれない。
(ミオンはそのことばかり考えているが、それはリソースの無駄じゃニャいのか?)
にゃあ介があきれる。
「それだけじゃあないよ? 一年ぶりの楽しみがあるんだ」
(聞かなくても分かる気がするニャ)
わたしはにんまり笑う。
「きっとユリナさん、腕によりをかけて、ごちそうを作ってくれる!」
(やっぱりニャ……)
そうこうしているうちに、セレーナの別邸が見えてくる。
わたしたちが門へたどり着く前に、すでにメイドのユリナさんが外に立って待っているのが目に入った。
◆
「ユリナさん!」
チコリが声をあげると、
「チコリ!」
とユリナは大きく手を振り返す。
チコリは待ちきれずに、もう走り出している。
「お帰りなさい、チコリ」
両手を広げるユリナを見て、心からうれしそうなチコリ。
ここが、自分の家であることを再確認しているのかもしれない。
「ただいま、ユリナさん!」
チコリはユリナの胸へ飛び込む。
「うーん、感動的だなあ」
わたしが思わずそう言うと、
「まったくだ」
リーゼロッテが、
「まるで本当の我が家に帰ってきたようだな」
と同意する。
セレーナもうれしそうに、
「まるでも何も、ここはチコリの家よ」
ふふ、と微笑むと、
「ユリナ!」
と手を振る。
「セレーナさま!」
ユリナはチコリを抱いたまま、微笑みをあふれさせ、
「お待ちしておりました……お帰りなさいませ」
と頭を下げた。




