第四百七十話 期末試験終了
期末試験、当日。
わたしたちはみんな揃って学校の門に到着する。
澄み渡る青空を背景に、荘厳なお城のような校舎がそびえ立つ。
青い尖塔の冷たい輝きが天高く映え、いつにも増して時を超えた威厳を感じさせる。
「みんな、準備はいい?」
チコリ、リーズ、セタ王子に、わたしは声をかける。
「はい!」
チコリとリーズ、セタ王子は、拳を握って、校舎を見上げる。
「もう、四人ともまるで今から魔物と戦いにでも行くみたい」
セレーナが呆れたように言う。
「気楽にいこうじゃないか。肩の力を抜いて」
とリーゼロッテ。
「二人とも余裕なんだから! 期末試験は、そんなに簡単じゃないよ!」
わたしたちは門をくぐる。
校舎へ続く道を歩いていると、他の女生徒たちの話す声が聞こえてくる。
「おはよう。勉強した?」
「私、全然やってないよ~」
「私も~」
「でた! 勉強やってない詐欺だ! この世界にもあるんだ」
(ニャんだその名前は)
「みんな勉強してないのかな……?」
そう言うチコリに、
「ダメだよ騙されちゃ! そう言う子に限って裏切って良い点とるんだから!」
と注意する。
(別に騙しても裏切ってもニャいと思うが……)
そうこうしているうちに校舎の入り口へと着く。
「とにかく、ここまできたら全力を尽くすしかないよ。みんながんばろう!」
わたしたちは円陣を組んで、それぞれの教室へ散っていくのだった。
◆
教室内は静かだ。
皆、緊張の面持ちで、言葉少なに試験の開始を待っている。
直前まで復習をしている生徒もいて、羊皮紙を繰る音や、カリカリと書きこむペンの音がかすかにひびく。
やがて、教室の扉が開き、先生が入ってくる。
今回の期末試験は、エスノザ先生の白魔術からだ。
わたしはゴクリと唾を呑んで、姿勢を正す。
……三人は大丈夫だろうか?
「きっと大丈夫。今は自分のことに集中しよう」
わたしはそうつぶやく。
できることはやった。
あとは実力を発揮するだけ。
エスノザ先生が、回答用の羊皮紙を配る準備をしながら言う。
「それでは、机の上の物をしまって」
さあ本番だ。
今年一年の成果を見せるときだ。
いよいよ期末試験が始まる……。
◆
数日後。
わたしたちは食堂にいる。
「終わったね……試験」
「終わったな」
「そうね」
わたしたちは、一斉にため息をつく。
「はあ~」
皆、机に突っ伏して、脱力する。
しばらくしてチコリが口を開く。
「あたし、緊張しっぱなしで……思い出すだけでお腹痛くなりそう」
セタ王子は、
「僕なんかもう、ずっと冷や汗びっしょりで。試験の途中で何度も汗を拭きましたよ」
とぼやく。
六人の間に、笑いが起こる。
「でもね、みんなとたくさん勉強したおかげで、問題の答えを全部埋めることができたの!」
「すごいじゃない、チコリ!」
「僕も、黒魔法の試験、ヒネック先生の厳しい視線の中でも、練習のときより緊張しなかったんです!」
「『みんなにじーっと見られる作戦』のおかげだな」
「とくにリーゼロッテにね」
わたしはむふふんと笑う。
「みんなお疲れさま」
わたしは、後輩たち三人をねぎらう。
「あとは、結果を待つのみね」
セレーナが言う。
「大丈夫かなぁ」
チコリはまだ少し不安そうだ。
「ま、なるようにしかならないよ」
わたしは言う。
「ミオン、切り替え早いね」
チコリに言われ、わたしはにっこりと笑う。
「だって……」
もちろん試験から解放されたからだけではない。
わたしの笑顔の理由は……
「だって、楽しい楽しい休暇が待ってるんだもん!」