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第四百六十五話 失踪事件解決、その後2

 廊下で仁王立ちしている人物。

 それは、小さな一人の女の子……ではなく、齢を重ねた、この学校の最高責任者だった。


 わたしたちは、姿勢を正さざるを得ない。


「校長先生……!」

「また無断欠席とは、どういうことぢゃ」


 ガーナデューフ校長先生は、腕を組んでにらみを利かせる。


「す、すいません」

「ごめんなさい校長先生」


 わたしたちは、ひたすらあやまる。

 背後から、くっくっという、ケインたちの笑い声が聞こえてくる。


「これは重~い罰が必要ぢゃな。君たちのサボリは二度目ぢゃからの」


 校長先生の言葉に、わたしたちはごくり、と唾を呑む。


 以前、ヒネック先生とエスノザ先生を追って迷宮都市ミレゥザへ行ったときも、学校を無断欠席してしまったのだ。

 あのときの罰は、一か月の奉仕活動だった。

 それよりも重い罰……一体何だろう。


 戦々恐々とするわたしたちに、校長先生の口から発せられた言葉は、生易しいものではなかった。


「……残念ぢゃが、今年いっぱい停学ぢゃ」

「え?」


 停学……? 今年いっぱい……?


 一瞬、理解が追い付かない。

 理解したくなかったのかもしれない。

 だが否応なく、ゆっくりと言葉の意味が頭にしみこんでくる。


「そ、そんなぁ!」


 思わず叫ぶ。

 先生にすがりつこうとするが、ふわふわとして身体に力が入らない。


「校長、しかし我々は……」


 リーゼロッテが言う。

 セレーナ、リーズ、チコリ、セタ王子も、


「先生、聞いてください!」

「ま、待って」

「あ、あのぅ!」

「ぼ、僕たちは……」


 そんな風に狼狽している。


「いや、これは決定事項ぢゃ」


 校長先生はきっぱりと言う。


「皆もわかったな? 学校を無断欠席して危険な行動をするなど、言語道断ぢゃぞ」


 生徒たちがざわめく。

 校長先生は言う。


「すまんの。こうでもしないと、他の生徒たちに示しがつかん」


 何かピューッと聞こえた、と思ったら、ケインの口笛だった。


 わたしは、目の前が真っ暗になる。


「しかし先生、今年いっぱいの停学となると学年度の期末試験は……」


 珍しく動揺しているリーゼロッテが訊ねる。


「無論、受けることはできんのう」


「てことは……」


 口をパクパクさせ、ようやくのことで言葉を紡ぐ。


「わたしたち、留年!?」


「ははは! こりゃあケッサクだ!」


 ケインが高らかに笑う。


「おいネコ娘、来年はケイン『先輩』と呼ぶんだぞ!」


 そう言ってケタケタと笑うケインの笑い声も、どこか遠くから聞こえてくるみたいだ。


 絶望に苛まれるわたしたちに、


「ぢゃが、それだけではすまされないぞ。今回はさらに……」


 と校長先生。


「ま、まだあるんですか?」


 膝から崩れ落ちそうになるわたしたち。


「今回の事件で……」


 すこし間をためて、校長先生は言う。


「我が校の生徒、ビリーを助け出した褒賞として、停学を免除!」

「へっ?」


 わたしたちは、きょとん、と先生を見つめる。

 さらに校長先生は続ける。


「さらに、チコリを助け出した褒賞として、来年度の授業料を免除する!」

「えっ、えっ?」


「自警団の方々に何度も聞かされてのう。非常に勇敢な生徒たちだったと」


 わたしたちは、しばらく狐につままれたみたいに動けない。


「おかげで不穏分子を捕まえることができたと喜んどった。それで、ルミナスの治安を守った君らの、授業料分を寄付したいそうぢゃ」


 ぽかーんと口を開けて立ち尽くすわたしたち。

 それからようやく事態を理解して……


「やったーっ!」


 抱き合って喜ぶ。


「ありがとうございます!」


 自然と、生徒たちから拍手が起こる。

 よかった。また学校に通える! しかも、授業料免除だって!


「校長先生、大好き!」


 ガーナデューフ校長先生は、笑顔でわたしたちを見守っている。

 喜ぶわたしたちの背後で、ケインが面白くなさそうに舌打ちをするのだった。


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