表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
459/595

第四百五十八話 失踪事件9

 倉庫の中は、薄暗い。

 壁の近くには、何かの詰まった麻袋が山のように積み上げられている。


 セタ王子は、男たちに囲まれ、腕を掴まれて身動きが取れない。

 男たちは七~八人ほどいるようだ。


「何だお前は?」


 男たちの一人が言う。


「正義のヒロインよ」


 わたしはそう答える。


(ふざけている場合か?)


 にゃあ介があきれる。


「王子から手を離しなさい」


 わたしの後ろからやってきたセレーナが、言う。


「何だぁ? 小娘ばかり二人も……」


「三人だ」


 さらに後ろからリーゼロッテが顔を出す。

 男たちは面食らっている。


「その手を離しなさい」


 セレーナがもう一度言う。


「痛い目にあいたくなければね」


 その言葉に、男たちは笑い出す。


「ぎゃははは!」

「おい、俺たちを痛い目にあわせるとよ!」

「嬢ちゃん、ちょっとよくわかんねえなぁ。痛い目ってのは……」


 王子の腕を掴んでいた男が、言う。


「こういうやつかい?!」


 男が王子の腕を捻り上げる。

 王子が痛みにうめく。


「おやおや、痛かったでございますか、王子さま」

「王子さま、ひどい目に合いましてございますねえ……」

「ひゃははは!……うおっ?!」


 セレーナの動きは速かった。

 男たちに向かって突進し、身体を当てる。

 三人の男が、セレーナに突き飛ばされて吹っ飛ぶ。

 二人は地面に転がり、一人は麻袋に突っ込んだ。

 間髪いれず、セレーナは、王子の腕を掴んでいた男の手を取って、捻り上げる。


「ぐぁあああぁ!」


 痛みに悶絶する男。


「王子、はやく!」


 王子がセレーナに連れられて、こっちへ走ってくる。


「この……」

「そいつを渡しやがれ!」


 男たちがセレーナに向かって、飛びかかろうとする。

 わたしはとっさに前に出て、剣を構える。


「セレーナに指一本でも触れたら、斬るから」

「お前みたいなガキに、そんなことができんのか?」


 男の一人が、構わず飛びかかってくる。

 わたしは剣を振る。


「うおっ!」

「斬る、と言ったでしょ」

「……!」


 男の腕から青い血が流れる。


「……クロースか」


 リーゼロッテが言う。


 男はにやり、と笑う。


「驚いたか? そうと分かったら、大人しく王子を返してもらおう」


 男たちが詰め寄ってくる。


「王子は渡さない」


 わたしは、王子の前へ立ちふさがり、言う。


 と、声がする。


「やれやれ……」


 倉庫の奥の暗がりに、もう一人、男がいる。


「何をやっている?」


 暗くてよく見えないが、男はかなりの長身だ。


「レイス様!」


 男たちがいっせいに、その長身の男の方を振り返る。


「……どうやら、あれが黒幕だな」


 リーゼロッテが言う。

 セレーナに腕を捻り上げられた男が、話す。


「すんませんレイス様。ちょっと不意をつかれて……」

「だまれ。この役立たずが」

「ひっ」


 男は、レイスという男のことを、心底怖がっているようだ。


 暗がりから、長身の男――レイスがゆっくりと姿を現す。

 レイスは言った。


「王子ひとりで来い、と伝えたはずだが?」


 レイスの髪は紫で、その皮膚は青白い。

 そして、男の目は赤く、瞳孔は金色に光っていた。


「あの男……」


 リーゼロッテが言った。


「魔族だ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ