第四百五十三話 失踪事件4
「コニー……、なんなの? わたしたち、急いでるんだけど」
一刻も早くチコリを探しに行きたいわたしは、じれったくてコニーに早口で訊ねる。
コニーは、
「……預かってるものがあるわ」
それだけ言うと、白い封筒を差し出した。
「わたしたちに?」
訳が分からなかった。
わたしは封筒を見つめて固まる。いったいどういうことだろう。
「はやく受け取って」
コニーがせかす。
後ろを振り返ると、皆いぶかしげな表情で、こちらを見守っている。
わたしは、コニーから封筒を受け取った。
「これは?」
「知らない。渡せって言われただけ」
コニーは口をとがらせて言う。
わたしは封筒を覗く。そこには一通の便せんが入っていた。
セレーナが言う。
「読んで」
わたしは便せんを取り出して開く。
そこに書かれていた内容に、わたしはハッと息を呑んだ。
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魔法学校の生徒を二人、預かっている。
無事返して欲しければ、セタ王子一人で下記の場所へ来い。
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そして簡単な地図。
「どういうこと、コニー!?」
わたしはコニーに詰め寄る。
「誰に言われたの?!」
コニーは肩をすくめるだけで何も答えない。
「コニー、答えて。誘拐事件かもしれないの」
コニーは唇を噛む。
「本当に何も知らないの。父の知り合いよ。私は父に、手紙を渡してくれって言われただけ」
「それだけ?」
「それだけよ。もう行くわ」
コニーはわたしたちに背中を向け、歩き出す。
「まって、まだ……」
まだ訊きたいことはある。
そう言おうと思ったが、リーゼロッテが肩に手を置いてわたしを止める。
「今は時間が惜しい。あの様子では本当に何も知らないのだろう」
わたしはコニーの背中に声をかける。
「ねえ、コニー! あなた、混血であることに縛られてない? ……もっと自由になりたいと思わない?」
コニーは、しかし、何も答えなかった。
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「どうする?」
わたしたちは校庭で、コニーから受け取った手紙を手に立ち尽くしていた。
セタ王子は一人、黙って俯いている。
わたしは手紙を読み返す。
セタ王子一人で来い、そう書かれている。
「……僕、いきます」
セタ王子が言った。
リーズが即座に、
「そんなのダメに決まってるでしょう。あなたにまで何かあったら、どうするの?」
と止める。
「しかし、それしかないでしょう」
セタ王子は言う。
「僕一人で来い、と書いてあります」
「その方が向こうにとって都合がいいからだわ。とても危険よ」
セレーナが優しく言う。
「セレーナの言う通りよ。向こうの思うつぼだわ!」
リーズも同意する。
だがセタ王子は言う。
「他の誰かが行くより、僕が行った方が、交渉の余地があるんじゃないでしょうか。……それに」
王子はこう続ける。
「あちらの言う通りにしなければ、二人の命を危険にさらすことになるかもしれない」
皆が、黙り込む。
何も名案がなかった。
リーゼロッテが言う。
「罠だぞ」
セタ王子は答えた。
「それでもいきます」




