第四百四十九話 模擬戦(魔法可)終了
「えー……」
わたしは不満の声を上げる。
せっかく楽しい試合だったのに……。
「いい試合だった!」
「どっちもすごいぞ!」
生徒たちから拍手が起こる。
「うーん、ざんねん」
わたしはつぶやく。でもそんなわたしより、もっと悔しそうにしているのはリーズだ。
「くーっ! くっそー!」
地面をけっとばして悔しがっている。
「あ、あの、リーズ……」
わたしが声をかけようとすると、
「もうっ! また負けたっ!!」
リーズは天を仰ぐ。
「いや、いい試合だったよホント」
リーズは全然聞いてない。
「今度こそ! 今回はいけると思ったのに!」
と、膝をつく。
「ま、まあまあ、リーズさん」
「リーズ、落ちついて」
チコリとセタ王子になぐさめられながら、リーズは立ち上がる。
一方、ショウグリフ先生は締めの言葉を述べている。
「皆、お疲れ様。いい試合であった。これで、魔法と武術の連携の有用さがわかっただろう」
そしてショウグリフ先生は続ける。
「以降も、イェルサの稲妻の指導のもと、研鑽を積むように。それから、基礎となる、魔力を練る練習を怠らないよう。…… では、解散!」
◆
リーズはしばらく不機嫌だったが、昼食の席でセレーナが話しかけると、
「ま、次は勝つわ」
と言って、笑顔を見せた。
◆
それから数週間かは何事もなく過ぎた。
朝。
日光が差し込む魔法学校のキャンパスは、一日の始まりを告げる活気に満ちている。
広大な敷地内には、古い城のような校舎がそびえ、学生たちはそれぞれの教室に向かって忙しく歩いている。
始業の鐘。
教室内では、教師が身振り手振りを交えながら、魔法の理論を説明している。
生徒たちはそれぞれペンを手に取り、真剣な表情で授業に聞き入っている。
いつもどおりの風景。
何も問題はないように思えた。だが……
昼食時、大広間に、生徒たちが集まっている。
それぞれ賑やかに雑談しているなかで、わたしたちは昼食を摂っている。
「……ねえ、ミオン。ちょっと聞いてほしいんだけど」
チコリが、わたしに話しかけてきた。
「ん? どうしたの?」
わたしはサンドイッチを食べる手を休めて応える。
「あのね……、今日、ある噂を聞いたの」
チコリは声を落として話す。
「うわさ? なになに?」
わたしは身を乗り出す。
「そう。変な噂なんだけど」
チコリは、リーズとセタ王子に目配せをする。
二人とも、黙ってうなずく。
そんな三人の様子を見て、セレーナとリーゼロッテも、サンドイッチを食べる手を止める。
「なに? いったい何なの?」
うわさ話は嫌いじゃない。
けれど、チコリの神妙な顔が、すごく気になる。
「なんでもね、あたしのクラスの生徒の一人が……」
チコリは言った。
「失踪しちゃったんだって」




