第四百四十五話 模擬戦(魔法可)2
「まずは、リシュアチーム対、アモンチームからいくよ」
まず、下級生のチーム同士の対戦から始まった。
リシュアは茶色い長髪の男の子、アモンは黒の短髪で、リシュアより一回り身長が低い。
この二人がチームのリーダーだ。
リシュアチームの三人は全員が模造刀を、アモンチームは二人が模造刀、アモンが模造槍を持っている。
「はじめ!」
ジェイクの開始の合図。
リシュアチームの一人が先陣を切って、剣(模造刀)を上段から振り下ろすように斬りかかる。
アモンチームの男の子が、模造刀の刀身でそれを受ける。
その隙に、模造槍を持ったアモンが、かがんでリシュアチームの相手に足払いをかける。
「おっ、チームプレイ。いいね!」
ジェイクが言う。
足払いをかけられたリシュアチームの生徒が、しりもちをつく。
「アモンチームに1ポイントよん」
ジュナがポイントを宣言する。
槍を構え直したアモンが、さらに追い打ちをかけようとする。
が、リシュアチームの残り二人がそれを阻む。
「とうっ!」
リシュアが横なぎに剣を払い、さらにチームメイトが上段から斬りかかる。
槍使いのアモンは、ふたりに攻撃を仕掛けられ、バランスを崩す。
「リシュアチーム、2ポイントだ」
ルーベンダイクが言う。
リシュアチーム、さらに転んでいた一人が起き上がり、攻撃に参加する。
アモンチームの男の子も、アモンに助太刀するが、押されている。
「アモンチーム、厳しいですね」
「これはリシュアチームの勝ちかな?」
セタ王子とチコリが言う。
「そうでもない」
つぶやいたのは、メティオだ。
メティオの視線の先には、少し離れた位置にいる、アモンチームの女の子が立っている。
女生徒は剣を持たない方の手の平を、リシュアチームの三人に向けている。
「ふせて!」
アモンチームの二人はとっさに身体を低くして、地面に伏せる。
「凍てつく刃よ!」
生徒が放った氷の魔法が、リシュアチームめがけて飛ぶ。
不意をつかれたリシュアチーム。リシュアがその氷柱をもろに受けてしまう。
「アモンチームに3ポイント」
ジュナの宣言。
氷の魔法を受けたリシュアが、腹を抑えてうずくまる。
「そこまで! 2対4で、アモンチームの勝利!」
ジェイクが叫ぶ。勝敗が決した。
「……リシュアチームの二人、その子を医務室へ連れて行ってあげて」
魔法を食らったリシュアは、脇腹を痛そうに抑えている。
「アモンチーム、よくやったね」
生徒が医務室へ運ばれた後、ジェイクは言った。
「最初から、一人を戦闘から切り離して、狙い撃つつもりだったんだろ? 作戦勝ちだね」
ジェイクに褒められ、アモンチームの生徒たちは、照れくさそうに微笑む。
「ふわー、すごい」
わたしは言う。
「いい戦いだったわね」
セレーナも感心している。
「うむ。一年生にしては、よく練られた作戦だ」
リーゼロッテがうなずく。
「一回戦からこんな試合されちゃうと、わたしたちも、うかうかしてられないね」
わたしはそう言って、二人の顔を見る。
ふたりとも、目が真剣だ。わたしと同じように興奮しているのがわかる。
「魔法が加わるだけで、とたんに戦術の幅が広がる。複雑性が一気に増すんだ」
リーゼロッテが言う。
「そうね。私たちの試合も、どう転ぶか分からないわ。油断しないように行きましょう」
と、セレーナが応じる。
「もちろん!」
わたしはうなずく。
「さあ、第二試合をはじめるよ!」
ジェイクが宣言している。
こうして、試合は次々と進み――わたしたちと、リーズ・チコリ・セタ王子チームの試合が近づいていた。




