第四百四十四話 模擬戦(魔法可)1
生徒たちがざわつく中、ショウグリフ先生の説明は続いている。
「この授業の主眼となるのは、魔力を練りながらの戦闘だ。魔力を練りつつ、走る、跳ぶ。魔力を練りつつ、剣を振るう」
先生は言う。
「そして、今、魔法を使うべきか、否か。その判断を素早く行えるかどうかが、勝敗に大きく影響する」
皆、興味深そうに話を聞いている。
「魔法で致命傷を与えることは難しい。しかし、魔法は使い方によっては、戦闘を有利にするのに非常に効果的であるといことを、皆に知ってほしい」
先生は話を続ける。
「魔力と身体の動きが一体となったとき、君たちの強さは、一段上へあがるだろう」
ショウグリフ先生は、ジェイクを見て、こう言った。
「以上でよいかな?」
「はい」
ジェイクはうなずく。
「……あ、ちょっと補足を」
それから、わたしの方をちらっと見て、
「模擬戦だからね。くれぐれも、一部の者は魔力を抑えるように」
わたしはぽりぽり頭をかく。
ジェイクは笑う。
「まあ、心配しなくても、同級生や下級生に最大魔力をぶっ放したりはしないだろうけど」
ジェイクは言う。
「魔術と体術、両方を高い水準でこなすことができれば、Sランク冒険者に近づくこと間違いなしだよ」
そして、手を叩く。
「はい、それじゃあみんな、チームを組んで!」
◆
わたしたちは、もちろん、いつもの三人組だ。
わたしと、セレーナと、リーゼロッテ。
「ま、この三人じゃ強過ぎちゃうけどね」
わたしが言うと、にゃあ介が、
(驕れるもの久しからずニャ。調子に乗ってると、足元をすくわれるぞ)
とたしなめる。
「へへ。……うん、わかってる」
わたしはうなずく。
「だって今回は、強敵がいるからね」
目を向けた先は、例の三人組。
リーズ、チコリ、セタ王子だ。
リーズはこちらを見ながら、
「あんたたち、足を引っ張らないでよ。……ぜったい負けたくないから」
すでに鼻息荒く、チコリとセタ王子に、そう言っている。
チコリはといえば、
「セレーナさまと戦うなんて……」
と、及び腰だ。
そしてセタ王子は、
「り、リーゼロッテさんと手合わせするなんて初めてですね……」
こちらも動揺している。
「まあまあ、みんな、肩の力を抜いていこうよ」
そう言っているわたし自身も、実はかなり興奮している。
魔法OKの模擬戦なんて、初めてだ。なんだか、うずうずしてくる。
そんなやりとりをしているうちに、チーム分けは終わっていた。
ショウグリフ先生が言う。
「よし。それでは、これより模擬戦を始める」




