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第四百三十九話 お菓子作り対決3

 リーズのお菓子作り特訓は、その日から始まった。

 毎日、授業後に寮のキッチンを借りて、ミルクの混ぜ方からロールアイスの延ばし方、巻き方まで……。

 失敗を繰り返しながらリーズは特訓を重ねた。


 そして……


 今日はとうとうお菓子作り対決の当日だ。はたしてリーズは上手くお菓子を作ることができるだろうか。

 はたして、セタ王子は無事、生きて帰れるのだろうか……?!




   ◆




「こんな広いキッチン、あなたたちは使ったことないでしょうけれど」


 メリルが言う。

 たしかにメリル家のキッチンは、何人ものお手伝いさんが同時に使えるほど広かった。


「使わせてあげる。材料も、仕方がないから使ってもいいわ」

「使わせてもらうわ」


 リーズは礼も言わず、ずかずかとキッチンへ入る。


「まあ、ある程度は揃ってるみたいね。セレーナの家にはかなわないけれど」


 メリルはキーッと歯噛みして、


「勝負は一対一よ。私と、あんた! おいしいお菓子を作った方の勝ちだから!」


 それから言う。


「約束通り、勝った方がセタ王子を独占できるのよ!」


「え、ええと? あのあの……」


 セタ王子は、噴き出す額の冷や汗を拭いている。


「ぼ僕はまだ何とも……」


「それじゃあ、はじめるわよ! セタ王子争奪、お菓子作り対決、開始!」




   ◆




「始まっちゃったね」


 キッチンの向こう側では、メリルが早速調理に入っている。

 大口を叩くだけあって、さすがに手際がいいようだ。


「さて……」


 わたしはリーズの隣で腕を組む。


「じゃあリーズ、教えた通りにやるんだよ。いいね?」


「わかってるわよ。ちょっと静かにして」


 リーズは腕まくりをして、集中する。


「一週間も猛特訓したんですもの。きっとできるわ」

「がんばって、リーズ!」


 セレーナとチコリが応援する。


「おねがいします、リーズさん」


 セタ王子は王族らしからぬ物腰で頭を下げる。


「それじゃあ、セレーナ、リーゼロッテ」


 わたしが言うと、二人は大理石でできた調理台の脇に立ち、氷の魔法を唱え始める。


「来たれ、氷の結晶!」


 大理石が凍り付き、白く霜が張る。


 その台に、リーズは持っていたボウルからミルクを流し込む。

 台の上でミルクは見る見る凍っていく。


「よし」


 リーズは凍りかけたミルクを、ヘラで薄く台に延ばす。

 練習しただけあって、かなり順調だ。


「うまいうまい。いい感じだよ」


 アイスが均一に延びた。

 リーズは一旦、一呼吸置く。


「あとは巻くだけ……」


 リーズはヘラを台に押し付け、アイスを縁からすくっていく。

 くるくるとアイスは巻き上がり、ロールアイスが出来上がっていく。


「やった、やった! リーズ、すごい!」


 チコリが手を叩いてはしゃぐ。

 他の皆も、


「おお! いいじゃないか」

「うまいわ。一週間の成果ね!」


 と、リーズの手並みを賞賛する。


 わたしたちの騒ぎに、何事かとメリル家のお手伝いさんたちもキッチンを覗きこんでくる。


 リーズは次々とロールアイスを巻き上げる。


「よーし、どんどんいくわよ!」


 グリルプレートへ新たにミルクを流し込もうとするリーズに、 


「あ、ちょっと待ってリーズ」

「なんなのよ」


 わたしは持参した布袋から、ある物を取り出す。


「ドミンゴの実?」

「それをどうする気だ?」


 セレーナとリーゼロッテが、不思議そうに訊ねる。

 わたしは、ドミンゴの実を剥いて果実を取り出し、プレートの上へ乗せる。


「ちょっと、何を……」

「リーズ、これをヘラで叩いて、ミルクに一緒に混ぜ込んで」

「ええ?」


 不審がるリーズ。しかし迷ってる暇はない。


「もう! どうなっても知らないから」


 リーズは言われた通り、ドミンゴの実をヘラでカタカタと叩きはじめる。

 凍ったドミンゴの実が、細かく砕けてアイスの上へ広がる。


「わあ!」


 チコリが目を輝かせる。


「オレンジ色のアイスクリームになった!」

「うん、いいよ! ドミンゴの実のロールアイス、完成だね! じゃあ次は……」


「ミオン、まだあるのね?」


 わたしは布袋をガサゴソとあさる。


「むふふ……次はこれ!」


 わたしは布袋からイチゴによく似た果物を取り出す。


「さあ、この調子でどんどん作ろう!」

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