表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
438/595

第四百三十七話 お菓子作り対決1

 そんなこんなで、リーズはメリルたちとお菓子作り対決を行うことになった。……セタ王子を賭けて。

 授業後、アルトリーチェ寮の厨房に皆で集まり、リーズのお菓子作りの特訓を見守っている。


「ところでリーズ、お菓子作れるの?」


 わたしが訊ねると、リーズは言った。


「作ったことはないわ。でも簡単でしょう? お菓子作りなんて」

「ええっ!」


 はたで聞いていたセタ王子が驚く。


「だ、だいじょうぶなんですか、リーズさん……」


「ま、なんとかなるでしょ。万が一、負けたところで、あなたをとられるだけだし」

「そ、そんなぁ……」


「冗談よ。とりあえず作ってみるから黙って見てなさい」

「はあ……」




   ◆




「やれやれ」


 リーズが慣れない手つきでボウルにクリームを流し入れるのを見ながら、わたしは言う。


 あのあと話し合って、勝負は一対一で行うと決まった。

 つまり、メリル対リーズ。各々、一人でお菓子を作って、美味しかった方の勝ち、ということだ。


「一週間で、リーズはお菓子作りをマスターしなきゃならないのか」

「できるかしら?」

「無理かもしれないけど……ま、やるだけやってみるしかないね」


 わたしが言うと、セタ王子がうらめしそうな目でこちらを見る。


「ところで不思議なんだが」


 リーゼロッテが言う。


「メリルたちは、なぜああもセタ王子に執着するのだろう?」

「それは、セタ王子は王族だもの。王族とのつながりを持つことは貴族にとっては大きなことだわ」


「二人ともわかってないなあ。そんなの王子と恋仲になりたいからに決まってるじゃん!」


「そうなの?」

「そうなのか?」


 わたしは、はぁ~とため息をつく。


「二人とも、恋愛の話になるとてんで鈍感なんだから……」


 リーゼロッテは首を傾げ、


「うむ……しかし何だか腑に落ちないな……」




   ◆




 数分後、リーズは手に持っていた泡立て器を投げ出し、言った。


「無理!」


 リーズは、顔中クリームまみれになりながら、


「なんなのよこれ。おとなしくボウルの中に留まっている気はないの?」


 と生クリームに向かって悪態をついている。


「リーズ、力を入れすぎだよ。もっと、コンパクトに混ぜないと」


 わたしがアドバイスすると、


「なんなのよ! じゃあ、あなたがやりなさいよ!」


 と逆ギレされる。


「リーズさん……」


 セタ王子の顔色は青い。


「どうするんですか。ぼ、僕はいったいどうなるんです」

「うるさいわね。ちょっと黙ってて」


「しょうがないわね……。どうやら私の出番みたいね」


 と言い出したのは、セレーナだった。


 ぎくり、と一同が固まる。


「アイデアはあるわ。このまえ、お肉を使ったケーキを作ったじゃない?」


 セレーナはにこにこしながら言う。


「こんどはお魚を使うのよ! クリームの甘さと、お魚の風味が合わさって、きっとおいしくなるわ」


 セレーナが腕まくりをしながら、キッチンに向かう。


「せ、セレーナちょっと待って」

「セレーナさま、あの……」

「落ち着けセレーナ」


 ここは皆、全力で止めに入る。


「あら、なあぜ?」


 不思議そうなセレーナ。


 こうなったら仕方ない。

 わたしは言う。


「セレーナが腕をふるうまでもないよ。……ここはわたしに任せて」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ