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第四百三十話 白魔法×黒魔法2

「古の炎よ、焼き払え――ファイア!」


 ヒネック先生が両手を高く挙げ、叫ぶ。

 ヒネック先生の挙げた手から、火の玉が生まれる。それは、空中を飛んで、土嚢の山へ着弾した。


 ヒネック先生は続けざまに唱える。


「ファイア! ファイア!」


 その手から次々と火の玉が飛び出し、真っ直ぐな軌跡を描いて着弾する。


「す、すごい……あんな連続で……!」


 生徒たちが声をあげる。

 ヒネック先生は、さらに炎の魔法を土嚢へ撃ち込み続ける。


「ファイア! ファイア! ファイア!」


 エスノザ先生が動く。

 ヒネック先生の後ろに立っていたエスノザ先生は、両手の平を、ヒネック先生の背中に向け、唱える。


「聖なる力よ……来たれ!」


 エスノザ先生の手の平から、白い光が放たれる。

 白い光がヒネック先生の身体を包む。


 するとどうだろうか。


 火の玉が変化しはじめた。

 ヒネック先生の撃ち出す火の玉は、最初は直径二センチほどだったのが、徐々に大きくなっていく。

 今や、その直径はこぶし大の大きさになっていた。


「おおっ!」


 そして、その数!


 10、20、30……

 ヒネック先生の手から放たれる火の玉の数が、激増していく。

 目標の土嚢の山へ向かって、炎の玉は嵐のように降り注いでいた。


 土嚢が砂をまき散らしながら、弾け飛ぶ。


「うわああ!」


 生徒たちから大歓声が上がる。

 わたしも、気づけば、一心不乱に手を叩いていた。

 拍手のしすぎで手が痛い。


 やがて炎の嵐が止む。山と積まれていた土嚢は、見るも無残な有り様だった。

 エスノザ先生が汗を拭く。


「ふぅーっ。これが、黒魔法を白魔法で補助する方法です」


 そうして、


「今私が使った白魔法は、強化魔法の一種なんです」


 こう言った。


「自身の魔力を相手に送り込み、相手の魔力を増幅させることができるのです」


「へえーっ!」


 ヒネック先生は、


「ふん。わざわざ好き好んで自分の魔力を他人に分け与える者などおるまい。無用な魔法だ」


 とあきれた様子だった。


「ただ、この魔法には常に効果があるというわけではないのですがね。術者と被術者の相性が合わないと上手くいきません。お互いの魔力の親和性というんでしょうか……」


「じゃあエスノザ先生とヒネック先生の相性はとってもいいんですね!」


 生徒の誰かが言うと、ヒネック先生はギロリとその生徒を睨む。

 生徒は、怯えた亀のように首をすぼめる。


「なにを馬鹿げたことを……」


 と、不愉快そうなヒネック先生なのだった。




   ◆




 授業後、校舎へ戻りながら、わたしは興奮しきりだった。


(ミオン、興奮するのはいいが、よだれを拭け)

「すごーい!……なんで先生たち、あれをミレゥザで使わなかったのよう!」


「ヒネック先生に補助したところで、その間エスノザ先生が動けなくなるし、魔力を消耗してしまうもの。……興奮しすぎよ、ミオン」


 セレーナにたしなめられる。


「だが、たしかにすごかったな。普通に考えたら、使える場面は局所的だが……ミオンには、無尽蔵の魔力があるからな。もしかしたら、ミオンにうってつけの魔法かもしれない」

「でしょでしょ、リーゼロッテ。すごいよ、魔力が掛け合わせられるなんて!」


 わたしはよだれと鼻息をなんとか抑えながら、


「あんなの見せられたら、放っておくわけにはいかないよ。大魔導士を目指すわたしとしては……」


 こう宣言する。


「マスターするしかない!」


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