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第四百二十八話 第三回合同授業

 ルミナス魔法学校の始業の鐘が鳴る。

 あの鐘をセレーナとガーリンさんと一緒に直したのは、いつのことだったかな。

 今朝も、ガーリンさん自慢の、自動で鳴る鐘の音が、ルミナスの空へ響き渡っている。


 わたしたちは校庭にいる。

 今日は待望の第三回合同授業なのだが、この校庭に出るよう指示されたのだ。


「今日の授業は特別教室じゃないんだね」

「何をするのかしら?」


 期待して待っていると、やがて校庭へ先生が現れた。


「どうもおはようございます」


 やってきたのは、シルクハットがトレードマークの、エスノザ先生だ。


「今日は合同授業ですね。みなさん、心待ちにしていたことでしょう」


 エスノザ先生は、皆をゆっくりと見渡す。

 皆の期待に満ちた目を見て、


「ふむ。生徒は揃っているというのに……」


 先生が眉根を寄せ、振り返る。

 エスノザ先生はそのまま、無言で、開け放たれた魔法学校の扉の方を見つめている。


 かすかにコツコツという足音が聴こえた、と思ったら、ウェーブがかった長髪の男性が扉から速足で現れた。


「今日は合同授業だ。諸君、準備はいいか」


 校庭へ出てくるなり、ヒネック先生はぶっきらぼうに言う。

 エスノザ先生が、それを見て、大きくため息をつく。


 するとヒネック先生は、


「……なんだ?」


 ギロリとエスノザ先生をにらむ。


「なんでもない」


 エスノザ先生は手の平をひらひらと動かして、言う。


「さあ、授業をはじめよう」




   ◆




「この世の最高峰である魔術は、もちろん黒魔術だが……」


 ヒネック先生が話しはじめると、エスノザ先生が、


「ゴホン」


 と咳をする。

 ヒネック先生はそれを無視して、


「ええ……魔法界の頂点に君臨する、至高の魔法は、まちがいなく黒魔法である」


 と話し続ける。

 エスノザ先生は、やれやれ、といった様子で見守っている。


「そんなことはむろん諸君も承知だと思う」


 ヒネック先生は言って、校庭を見回す。

 こくこく、とうなずく生徒もいれば、あわてて目をそらす生徒もいる。


「……が」


 先生は、続ける。

 なんだか嫌々といった感じだ。


「必要といえるかどうかはわからないが……この黒魔法に、他の魔法の力を注入しようと思えばできなくもない」


「他の魔法とは、つまり?」


 エスノザ先生が言うと、ヒネック先生はめんどくさそうに答える。


「なんだかよく知らないが、白魔術とかいう魔法だ」


 ふん、と鼻を鳴らし、


「……白なんとかという、低級で軟弱な魔法が、黒魔術の助けになることもある。不本意なことだが」


 そこまでうなずきながらヒネック先生の話を聞いていたエスノザ先生。

 合いの手を入れるように、皆に話す。


「黒魔術と白魔術が互いを補いあい、相乗効果を得る方法があるのです」


 被せるようにヒネック先生が、


「有用といえるかどうか、わからない。わざわざ補助しなくとも、黒魔法単体で全く問題はない」


 と話す。


「……のだが、このどうでもいいケースについて」


 やれやれといった感じで、こう言う。


「この授業では、仕方がないので教える」


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