第四百二十三話 休日の予定
「……乗馬?」
皆がわたしの提案に首をひねる。
「ほら、セレーナの実家に行ったとき、わたしは番兵さんの後ろに乗せてもらったけど、セレーナは軽やかに乗りこなしてたじゃない?」
「ああ。たしかにそうだったが」
リーゼロッテが言う。
「セレーナは幼いころから、乗馬の練習をしていただろうからな」
「わたしも、あんなふうに、華麗にお馬さんを乗りこなせるようになりたい!」
「馬車じゃダメなの?」
「うん。乗合馬車には乗ったことがあるけど、せっかくだから直接、馬に乗ってみたい!」
わたしは力説する。
「乗馬……か」
リーゼロッテは考え込む。
「馬に乗れれば、街道に出現する魔物を退治するにも役立つと思わない? 馬上で剣を振るうなんて、かっこいいでしょ!」
「うん、素敵かも」
チコリが興味を示す。
「でしょでしょ?」
わたしは畳みかける。
「まあ、そこまでできなくてもいいの。とにかく、一人で乗ってみたくない? さっそうと馬にまたがる女子なんて、素敵だと思わない?」
リーゼロッテが言う。
「まあ、乗れないよりは乗れたほうが便利ではあるな」
「リーズは?」
「私は乗れるけれど」
リーズが答える。
「セレーナと一緒なら、どこでもいいわ」
セレーナが言う。
「ミオンがそこまで言うなら……」
「決まり! 明日はみんなで馬に乗ることに決定!」
チコリが言う。
「セタ王子は?」
「あ、忘れてた。セタ王子には、明日の朝、伝えよう」
こうして、半分押し切るようなかたちで、休日の予定が決まった。
「でも乗馬の練習なんてどこですればいいの?」
◆
「えへへ、ごめんねガーリンさん、押しかけちゃって」
「今日は学校は休みじゃのに、ワシの勘違いかと思うたわい」
後頭部に手をやるガーリンさんに、事情を説明する。
「というわけで、ガーリンさん、馬を貸してくれるところ知らない?」
「そういうことなら、ワシに任せとけ」
「やったー!」
わたしは両手を上げて喜ぶ。
ガーリンさんは言う。
「馬はいいが、誰に乗り方を教わるんだ?」
「それはもちろん、セレーナとリーズに」
わたしが指さすと、二人は仕方がないというふうに肩をすくめる。
「セタ王子は?」
「馬ですか? 乗れることは乗れます。あまり得意ではありませんが」
セタ王子が言う。
「じゃあセタ王子も教師係で!」
わたしが言うと、セタ王子は苦笑して、
「僕で務まるかわかりませんが、やってみましょうか」
とうなずいた。
「リーゼロッテに教えてあげてよ! かっこよく乗りこなすところを見せれば、セタ王子のこと、見直すと思うよ」
「そ、そそそ、そうでしょうか」
あたふたするセタ王子をよそに、ガーリンさんが言った。
「よおし、行くか。今日は馬に乗れるようになるまで、帰れんぞ」




