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第四百二十一話 二度目の合同授業、その後

 二度目の合同授業が終わって、教室を退室したわたしたちは、食堂へ向かう。

 食堂へ入ると、チコリ、リーズ、セタ王子の三人が着席して、手招きしている。


「こっちこっち!」


 わたしたちが席につくと、


「ミオン、どうしたの? やけにうれしそうだけど」


 チコリが訊く。

 わたしは、ポケットに手をやり、


「んふふ~、魔力回復薬」


 瓶詰になった緑色の液体を取り出す。


「魔力回復薬? へ~」


 チコリが物珍しそうな目で瓶を見つめる。


「ミオンは、クラスで唯一、完全な魔力回復薬の作成に成功したんだ」


 リーゼロッテが言う。


「わずかなりとも、遅延魔法を使える生徒自体、ごく少数だったものね。完璧に使いこなしていたのは、ミオンだけよ」


 セレーナにも褒められ、


「えへ、えへえへ」


 わたしは、うれしいやら恥ずかしいやらで、頭を搔く。


「すごいね、ミオン!」


 と、チコリ。


「ミオンさん、優秀なんですね!」


 セタ王子も言う。


「んふ、んふふふふ」


 わたしは、こみ上げる笑いを抑えきれない。


「調子に乗らない」


 とセレーナがわたしのおでこをつつく。


「いて。……ごめん」


 わたしは、素直に謝る。


「セレーナも作ったの?」


 リーズが訊ねる。


「ええ。ミオンのようには上手くいかなかったけれど」

「セレーナさまの作った魔力回復薬!?」

「セレーナ、見せて見せて!」


 チコリとリーズが、身を乗り出す。


「作りすぎちゃったから、あなたたちにも少しあげるわ」

「ほんと!?」

「やったー!」


 セレーナが懐から小瓶を取り出す。


「こっ、これは……」


 チコリ、リーズの腰が引ける。

 小瓶には、濃緑色のドロドロの液体が入っている。


「せっかくだから、お塩とスパイスで少し味付けしてみたの」


 セレーナがチコリとリーズのカップに濃緑色の液体を注ぐ。

 粘り気のある液体は、二人のカップにゆっくりと落ちていく。


「…………」


 チコリとリーズは、ぼちょぼちょと自分のカップへと注がれる様子を見つめたまま固まっている。


「遠慮しないで、飲んでいいのよ」


 ふたりは顔を見合わせると、観念したようにカップを口へ運ぶのだった。




「……でも合同授業ってすごいよね。今までになかったような、役立つ知識ばっかり!」

「ええ」


 セレーナが、テーブルに備え付けてあるナプキンを一枚取って口を拭く。


 向かいでは、チコリとリーズが涙目になりながらカップの液体をあおっている。


「とてもためになるわね。魔法史×魔物学、時の魔法×薬草学……つぎは何かしら?」

「さあ、なんだろうな。わからないが……」


 リーゼロッテもナプキンを取りながら、


「合同授業は、ガーナデューフ校長の発案らしいぞ。より実践的な内容の授業を受けられるように、と考えられたそうだ」

「そうなの?」


 セレーナが言う。


「……合同授業といい、昨年始まった身体鍛錬の授業といい、校長先生は、生徒たちに実戦で役立つ授業を、といろいろ考えてくださっているのね」

「わたし、実戦大好き! うれしいかぎりだね!」


 わたしが無邪気にはしゃいでいると、セタ王子がぽろり、と言った。


「ちょっと気になりますね。……我々生徒に、実戦の準備が必要だと考えられている、ということでしょうか」




   ◆




 授業が終わり、わたしたちは寮に帰ってきた。

 わたしはセレーナと別れ、自分の部屋のベッドに倒れ込む。


「ふぅ~」


 ベッドでゴロゴロしながら、つぶやく。


「明日からの休日、何をしよっかなあ……完全に忘れてた」


 合同授業の内容に興奮しすぎて、休日の予定を考えていなかった。


「久しぶりの連休なのに、これは由々しき事態だぞ」

「大げさニャ」

「そんなことないよ。JKには大事な悩みなんだから」


 にゃあ介はどうでもいいとばかりに前足で顔を洗っている。


「ショッピングがいいかな? ルミナスのカフェ巡りとかもいいかも! やっぱり、アウトドア派のわたしとしては……」

「アウトドア? 休日はいつも、ラノベ読むか魔法の練習をしてただけニャろ」

「……黒歴史を思い出させないで」


 わたしはむくれる。


「夕食のとき、セレーナと相談しようっと」


 そんなことを考えていると、部屋の扉がガチャッと開く。

 わたしは驚いて顔を上げる。


「セレーナ? どしたの」


 訊ねると、セレーナは困った顔をする。


「?」


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