第四百二十話 第二回合同授業
二度目の合同授業があったのは、翌週に入ってからだった。
前回と同じように、渡り廊下を渡って、合同授業用の教室へ向かう。
周りを見ると、他のクラスの生徒らしき顔があるが、チコリたちの姿は見えない。
「今日もあの三人のクラスとは違うのか……早く一緒に授業を受けてみたいな」
全員が着席すると、やがて教室の扉が開く。
入ってきたのは、エオル先生と、ユナユナ先生だった。
わたしは驚く。なんか、意外な組み合わせだ。
「ほっほっほ。みなさん、準備はよろしいでしょうか」
「本日の合同授業は、時の魔法×薬草学です」
◆
「マナ草という薬草があります」
まず、ユナユナ先生より二回り以上も小さいエオル先生が、話しはじめる。
「これを煎じた薬は、我々の身体に働きかけて、魔力回路を賦活する効果があり――」
エオル先生は言う。
「ま、平たく言えば、魔力を回復します」
そして続ける。
「マナ草は非常に希少な薬草です。この薬草から魔力回復薬を作成するには、すり鉢ですり、それから煎じ詰める必要があります」
こう説明して、腕を組み、
「しかし、すり始めるや否や、マナ草からは、魔力がどんどん揮発していってしまいます」
「なるほど」
リーゼロッテがとなりで頷く。
「わかってきたぞ」
なんだろう? リーゼロッテが一人で納得してる。
わたしが首を傾げていると、エオル先生がユナユナ先生を見上げ、言う。
「――つまり、時間との勝負なのです」
「そういうことね」
今度はセレーナがうなずく。
「わたしもわかった!」
わたしは手をポンとたたく。
「加速魔法で自分を速くして、急いでするんだね! わたし、大根おろし得意だよ!」
(ニャんだ、その特技は)
にゃあ介が呆れる。
(違うニャ。薬草をすりおろすのは、結構力加減が難しい。加速魔法では、あちこち飛び散るどころか、きっと滅茶苦茶になるニャ)
「あ、あれ? じゃあどうすれば……」
わたしの脳みそが、煙を上げそうになっていると、
「エオル先生のおっしゃられたとおり、回復薬を作るには、速さが要求される」
ユナユナ先生が、後を引きついで話しはじめる。
「逆に言うと、マナ草の時間を遅らせてやればいい」
ユナユナ先生は言う。
「そこで、時の魔法の出番というわけです」
「あ!」
わたしは思わず叫んでから、口を塞ぐ。
ようやくわたしにもわかった。
ユナユナ先生は生徒たちを見回して、言う。
「みなさん、遅延魔法のことを覚えていますね?」
そうだ。遅延魔法:<ディレイ>。あの魔法を使えば……。
先生たち二人は、
「ほっほっほ」
「もうおわかりでしょう」
微笑んで生徒たちを見回す。
「というわけで、この授業で学ぶのは、時の魔法を用いた魔力回復薬作成。その実践です」




