第四百十六話 告知
無事セタ王子も学校に戻ってきた。
わたしたち六人は、また一緒に魔法学校へ通い、授業を受け、授業後にはトレーニング場で特訓をしたりして時を過ごしている。
相変わらず、セタ王子はリーズとチコリに振り回されていて、
「王子の威厳はどこへ行っちゃったのかな……」
わたしは呆れる。セレーナは言う。
「そこがセタ王子らしいといえば、セタ王子らしいけれどね」
「ああ」
とリーゼロッテ。
「けれど、セタ王子にとっては良いことなのかもしれない」
戯れる三人を見ながら、セレーナが言う。
「賑やかなあの二人と過ごしていると、きっと悲しみを忘れていられるわ」
「あ……」
そうか。
わたしたちにとっては『国王』だけれど、セタ王子にとっては大切な『お父さん』なんだ。
セレーナには、その気持ちがよく分かるのだろう。
セレーナも、幼くして父親を亡くしているのだから。
わたしは三人に目を向ける。
チコリに手を引かれ、リーズに背中を押されては、あたふたしているセタ王子。
本当はつらいのに、わたしたちを心配させまいと明るく振舞っているのかもしれない。
「ミオン、泣いちゃだめよ」
「うん……」
そう答えるけれど、すでに涙目のわたしを見て、セレーナとリーゼロッテは苦笑する。
わたしは鼻を嚙みながら、リーズ、チコリ、セタ王子の三人を見守るのだった。
◆
セタ王子が戻ってきてから、幾日かが過ぎた、ある朝。
登校して、掲示板の告知を確認する。
「んー、なになに? 連絡事項?」
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連絡事項
この度本校では、授業内容の発展と、知識・技術の深化をはかることを目的として、『合同授業』の科目を設置することに決定しました。
尚、現在、講義内容および時間割等を調整中のため、詳細は追ってお伝えいたします。
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「合同授業?」
「どういうことかしら」
「ううむ、これだけでは何とも……」
わたしたちは掲示板の前で首をひねる。
「合同授業っていうことは、当たり前だけれど、合同で授業を行うってことよね」
セレーナが言う。
「他のクラスと一緒にっていうこと?」
わたしは訊ねる。
「そういうことになるのかしら」
セレーナが言うと、リーゼロッテは、
「まあ、書いてあるとおり、詳しいことはそのうちわかるだろ」
と肩をすくめる。セレーナも同意する。
「そうね。あれこれ詮索しても無駄かもしれないわ」
「そ、そうだね」
そうしてわたしは気持ちを切り替え、授業を受ける。
でも、やはり気になってしまうのだった。
「合同授業かあ……いったいどういう授業なのかな?」
(考えても答えの出ないことを、考えるだけ無駄ニャ)
にゃあ介もそう言う。
「う~ん、そうだよねぇ。……よし! 考えるのはやめよう」
今度こそ、そう決意する。
けれど、なかなかどうして、そうはいかないものである。
気がつくと、新しい授業――合同授業のことを考えてしまっている自分がいるのだった。
◆
翌週、ようやく答えが出るときがきた。
魔法薬学の授業が終わり、皆が大鍋やすりこぎの片づけをしているときだった。
事務のエイサさんが教室に現れ、こう言ったのだ。
「みなさーん、次の授業は合同授業になります」
教室内がざわざわとする。
「というわけでみなさん、特別教室へ移動してください」