第四百十二話 報せ
学校へ着くと、生徒たちがわたしたちの元へ一斉に押し寄せてきた。
「優勝おめでとう!!」
「すごかったね、君たち!」
みんな大興奮だ。みんなが殺到して、わたしとセレーナとリーゼロッテは、よろめいてしまう。
「あはは……きたね。前回と同じフィーバータイムが」
わたしは苦笑しながらつぶやく。
わたしたちの近くで、リーズ、チコリ、セタ王子も、もみくちゃにされている。
「な、なんなのよ!」
リーズが言うと、皆口々に、
「優勝はできなかったけど、リーズチームもすごかった!」
「うん。カッコよかったよ!」
チコリは、
「わ、わ」
と、戸惑っている。
セタ王子は、
「み、みなさん、落ち着いてください」
そうなだめるが、その声も耳に入らないくらい、みんな興奮している。
ファンたちにあちこち引っ張られながら、わたしは言うのだった。
「まあ、ほとぼりが冷めるまでしばらく続くから、観念するしかないね」
◆
「はぁ~、それにしても、落ち着く暇がないよ……」
わたしは机に突っ伏している。
「朝からすごかったわね」
セレーナが言う。
「やれやれ……、参った」
リーゼロッテもぐったりとしている。
あの後、なんとか教室にたどり着き、授業を受けたのだが、放課中もひっきりなしに生徒がやってくるので大変だった。
昼食も、落ち着いて食べられたものではなく、早々に食堂を後にした。
午後に入り、すこしは落ち着いてきたものの、まだときおり生徒たちが教室を訪れる。
「こんなにちやほやされるの、慣れてないから疲れちゃうよ」
と、教室の扉が開く。
「わぁ、またきた!」
扉の方へ目をやると、現れたのはチコリたちだった。
「なんなのあれ……」
「つかれたよぅ」
「参りました」
三人はふらふらと教室に入ってくる。おそるおそる後ろを振り返りながら、扉を閉める。
三人とも、げっそりした顔をしている。
「チコリたちか……」
わたしはホッと胸をなでおろし、
「前回の大会の後もこんな感じだったんだ。もうお祭り騒ぎだよね」
そうぼやく。
「あたしたち、優勝したわけでもないのに……」
チコリが言う。わたしは、
「チコリたち、活躍してたからね。人気が出て当然だよ」
と笑う。
「それにしても、疲れたね」
突然、また扉がガラッと開く。
わたしたち六人は、びくっとして振り返る。
立っていたのは、ちょび髭の、セタ王子の従者だった。
「おどかさないでよ……」
わたしたちは脱力しかける。が、
「セタさま!」
従者の様子が尋常ではない。
青ざめ、取り乱し……そして、すこし泣いているように見えた。
「どうした?」
セタ王子が訊ねると、従者は、もつれるような口調で言った。
「セタさま、お、お父上が……、お……王が……!」