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第四百四話 神殿跡

 山頂の神殿跡は、暗闇の中、いかにも静かにそびえていた。

 星明りだけが、その姿を黒く浮かび上がらせている。


「夜の学校は怖い、っていう、あるあるは聞いたことがあるけど」


 わたしはつぶやく。


「夜の神殿ってなると、もう、怖いを通り越して、神秘的だね」


 神殿を構成する石柱の間から夜空の星々が見えて、まるで宇宙空間の中に建っているようだ。


「ええ、美しいわね。でも、不思議だわ」

「いったいいつ頃、ここに建てられたのだろうか……」


 わたしたちはしばし、神殿跡を眺める。


「見とれてる場合じゃないよね。行こう」


 わたしたちは神殿の入り口へと向かう。


 神殿へ近づくと、石柱の高さがより際立ってくる。


 石でできた、あんな大きな柱を、こんな山のてっぺんまでどうやって運んだのだろう。

 その頃から、身体強化魔法はあったのかな……。


「静かね……」


 セレーナがつぶやく。


「うん。だけど」


 わたしは、肘をさすりながら言う。


「なんだか、誰かに見られてるみたいな、変な感じがする……」

「ふむ」


 リーゼロッテは、


「すでにガーゴイルの活動時間帯に入っている。だが、まだ姿は見えないな」


 そう言う。セレーナが、


「でも、間違いなく、この神殿を守っているのよね」


 突然、背後から足音がする。

 わたしは武器を構えて振り返る。

 現れたのは、少し遅れてやってきたリーズたちだった。


「もう、脅かさないでよ」


 わたしはため息を吐く。

 リーズがチコリとセタ王子に、何か話している。きっと、二人の足が遅いせいで先を行かれた、と文句を言っているのだろう。


「あ」


 リーズたちのさらに向こうにも、いくつか生徒たちの影が見えた。

 他の参加チームが追い付いてきたのだろう。


「結構やるね……」


 あの急峻な坂を、越えてこられるだけの体力があるチームが魔法学校に複数いることが頼もしかった。


「さて」


 わたしは言う。


「それじゃ、行きますか」



 わたしは前に向き直る。


 資料集で見たみたいな、古代ギリシャの神殿を思わせる建造物。

 パッと見ただけでわかる、巨大な神殿だ。

 石柱一本とっても、驚くほど大きいのだが、全体はいったいどれほど広いのだろうか。


 気が付けば、リーズチーム、それに他の数チームがわたしたちに追いついて、揃って神殿跡の前に立っていた。

 暗闇とはいえ、かつてどれだけ荘厳な神殿だったか、それが想像されて、畏怖を覚える。


 そのとき、右隣にいたセレーナが言った。


「何かおかしいわ」

「え?」


 わたしが訊き返すと、左隣のリーゼロッテが上を指差して、言う。


「見ろ!」


 見上げると、石柱に支えられた神殿の屋根の上に、いくつもの石像が建っているのが目に入った。


「石像……まさか」


 リーゼロッテが言っていた。

 ガーゴイルは普段は石像のような姿をしている……


 次の瞬間、


『ギャアアアアア!!』


 けたたましい鳴き声を上げ、石像たちが一斉に動き出した。


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