第四百話 第三の試練、開始
「とうとう最終試練か……」
わたしは入念に準備体操をしながら、校庭で先生の登場を待っている。
「きっと大丈夫よ」
セレーナが言う。リーゼロッテも、
「大丈夫だ」
「そ、そうかな……」
わたしもそう思いたい。
だが、つい先日の第二試練だって、大丈夫だと思っていたのに結果は三位だった。
今回は優勝が決まる大一番だ。油断はできない。
(ふむ、油断大敵。たしかに気のゆるみというのは恐ろしいものニャ。だが……)
セレーナとリーゼロッテの横顔を見ると、ピリッと神経が張りつめているのが分かる。
きっと二人も、大丈夫だと自分に言い聞かせているのだろう。
(緊張しすぎもよくニャい。バランスが大事ニャ)
「むつかしいね」
周りを見ると、他の参加者たちも、緊張した面持ちで言葉少なにその時を待っている。
参加チームの周りを囲んで見守っている観客たちの顔も、どこかこわばって見える。
「そういえば、参加者ちょっと減ったかな?」
わたしがそう口にすると、
「そうね。……無理もないわ、この試練は危険だもの」
「そうだな。力のないチームは、棄権して正解だ」
二人が言う。
「やっぱそれだけ厳しい試練なんだね」
わたしが生唾を飲み込んで、
「ああ、緊張してきた……」
正直に言うと、
「私もよ」
「私もだ」
二人も同意する。
そこへ、
「今日は第三の試練だ。これまでの試練とは訳が違う」
ヒネック先生が話しながら現れ、すたすたと壇上へ上る。
「今回諸君は、非常に手ごわい相手と戦うことになる。……すなわちガーゴイル」
先生は続ける。
「先日、私が棄権するよう勧めたのを覚えているだろう。三日間のあいだに、六組から申し出があった。彼らはすでに大会から離脱した」
先生は鋭い目で皆を見回し、
「まだ遅くはない。自信のない者はこの場で申し出れば、棄権を認める」
そう言う。
校庭がシーンと静まり返る。
参加者たちを端から端まで見渡したヒネック先生は、うなずいて、
「本当にいないのだな?……よかろう。それでは……」
真っすぐ向き直り、言う。
「これより第三の試練を開始する。南西ヌール山より、優勝カップを持ち帰った者が勝者だ」
先生は宣言する。
「――はじめ!」