第三話 ネコも、転生してた。
声が聞こえる。
(それがお前の中のもう一つの魂じゃ)
もう一つの……さっきの、妙な力のこと?
一瞬で魔物を倒した、ネコみたいな動き……。
(お前とともに失われた、一つのちいさな命……)
わたしと共に? あのとき一緒に車に轢かれた……にゃあ介?
にゃあ介! わたしの中に、にゃあ介がいるの?
涙が溢れてくる。にゃあ介、死んでなかったのね!
――よかった。わたし、もう二度と会えないんじゃないかって……。
わたしが泣きじゃくっている中、声は更に続けた。
(そうそう、それからサービスでしゃべれるようにしておいた)
しゃべれる? 何のこと?
目を覚ますと、わたしはまだ山の中だった。左に森、右に斜面。太陽は少し傾きかけている。
目から涙が流れていた。
そうだ。
「にゃあ介。にゃあ介、生きているのね」
ここがどこなのか、何が起きたのかなんてどうでもいい。
にゃあ介が生きていてくれたことが、ただうれしかった。
そのときだった。わたしの中で声がした。
(ワガハイを呼んだかニャ?)
「え、何これ? にゃあ介なの? にゃあ介がしゃべってる?」
(やれやれ、死んでしまうとは、我ながら不覚)
そうか。しゃべれるようにしといたってこのことだったのね。
……ごめんね、わたしのせいであんなことになっちゃって。
(あれはワガハイの不注意だ)
「ううんわたしが悪いの! でも良かった。にゃあ介の魂も生きていて」
わたしは、自分の肩を抱いて目を閉じる。
たしかに、わたしの中にもう一つのあたたかい何かを感じた。
(うむ。それよりも、ずっと思っていたことだが、にゃあ介という名前は気に食わぬ。ワガハイは、ミルヒシュトラーセと名乗りたい)
「……ちょっと、感動に水を差さないでくれる? なんなの急に。にゃあ介、あんたそんなキャラだったの」
(にゃあ介ではニャい。ミルヒシュトラーセだ)
「何でもいい。わたしあなたにまた会えて嬉しい! にゃあ介、にゃあ介」
(…………)
にゃあ介は黙ってしまった。ミルヒシュトラーセと呼ばなければ、返事をしない気らしい。
「にゃあ介?」
「…………」
「にゃあちゃん」
「…………」
「ミル」
(ニャんだ?)
ふむ。妥協点はこの辺なのね。
「やっぱりネコは気まぐれね……」
にゃあ介の予想外のキャラに笑ってあきれながら、ふと、視線を前方に戻す。
「え、で、これどうすんの?」
わたしは目の前に倒れている化け物をこわごわ覗きこんだ。
「死んでる? よね……」
化け物は白目を剥いて、ピクリとも動かない。
「どうしよう……放っといていいのかな。死体遺棄事件とかにならないよね」
次の瞬間だった。バシュッと音を立てて、化け物の死体が消えた。いや、完全には消えてない? 真ん中に、何か残っている。
「きれい……何だろうこれ」
近づいて目を凝らす。
「宝石だー」
薄い緑色の宝石だった。大きさは小指大くらい。わたしはそれを拾い上げ、ポケットに入れようとする。
「あれ、制服……」
そこでようやく制服じゃないことに気づく。
神サマ? がこの世界に合う服を用意してくれたのかな?
それにしても……
「全身茶色い……」
自分が着ている野暮ったい服を見て思った。
ちょっとダサくないかな?
神サマ、服のセンス!