第三百九十八話 ガーゴイル対策
「み、みんな大丈夫?」
わたしの呼びかけに、声にならないうめきが返ってくる。
みんな、水魔法を避ける練習をくり返したせいで、びしょぬれになっていた。
衣服が身体にはりつき、冷たそうだ。
「ごめんね、みんな……」
「いや」
リーゼロッテが首を振る。
「おかげで、詠唱を見て避けるタイミングがつかめてきた」
「うん。ミオンのおかげだよ」
チコリも言う。
「ええ。いいガーゴイル対策になるんじゃないかしら」
セレーナが微笑む。
「だけどちょっと……」
みんな、自分の肩を抱いて、異口同音に言うのだった。
「さむい!」
わたしは慌てて言う。
「ごめーん! すぐ火魔法で乾かそう!」
◆
そんな風に、魔力制御の練習とガーゴイル対策を、わたしたちは三日目も続けた。
「ミオン、魔力制御がかなり上手くなってきたんじゃないか?」
「うん、そうかも! みんなのおかげ」
たしかに、連日、魔力を絞って水魔法を唱えることを続けたおかげで、魔法制御が上達していた。
今は、前までなら絶対に出せなかったような、わずかな水量で魔法を放つことができる。
それに、コントロールもよくなってきていた。狙った場所に水が行くのだ。
「みんなも詠唱からの見切りが格段に上手くなってるよ!」
わたしが言うと、皆がうなずく。
昨日は、すぐに水を被ってびしょぬれになっていたのが、今日は皆、かなりうまく避けられるようになっている。
わたしたちは、なおもしばらく練習を続ける。
ひとしきりわたしがみんなを魔法で狙った後、今度は交代して、わたしが的となる。
詠唱を見てから魔法を避けるのは、口で言うほど簡単ではない。
けれど、くり返し練習することで、少しずつ上達していくのを実感できた。
「よし、このくらいにしよう」
リーゼロッテが終了の合図を出す。
「そうだね。ガーゴイル対策はこのくらいにしとこうか」
わたしは手足をぷらぷらと振って、言う。
わたしが炎の魔法で火を起こすと、皆その周りに集まって濡れた服を乾かしながら暖をとる。
「明日のために魔力を取っておいた方がいいもんね」
火を囲みながら、話す。
「ミオンは魔力の心配がないけれど、私たちはそうもいかないものね」
「うーん、でもまだ時間はあるよ。どうしようか」
わたしは考え、
「よっし。じゃあセレーナ、手合わせしよう」
セレーナに言う。
チコリたちの視線がこちらに向く。
皆、わたしとセレーナの手合わせには興味があるようだ。
「いいわよ。手加減なしね、ミオン」
セレーナは近くにあった棒切れを拾う。
わたしも手合わせ用の棒を拾おうと、周りを見回す。
……と、
「まって」
リーズが割って入った。
「どうしたの、リーズ」
セレーナが首を傾げる。
リーズは言った。
「セレーナ、久しぶりに私と手合わせしてほしいの」




