表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
286/606

第二百八十五話 一旦帰還

「……なぜお前がここにいる? 生徒たちまで引き連れて……」


 ヒネック先生は、眉間にしわを寄せて訊く。


「お前を助けに来たんだ」


 エスノザ先生が言うと、


「余計なお世話だ」


 ヒネック先生はぶっきらぼうに返す。

 エスノザ先生は、


「なぜ一人で行くなんて無茶をした? ……見ろ、怪我をしてるじゃないか」


 そう言うと、嫌がるヒネック先生に無理やり治癒魔法をかける。


「…………」


「まったく、こんなになるまで無理をするなよ」

「ふん」


「今日はもう遅い。とにかく、地上へ戻ろう。……立てるか?」


 ヒネック先生は自力で立ち上がり、言う。


「戻るわけにはいかない。この先で、何か異変が起きているのだ」


 そんなヒネック先生に、エスノザ先生は言った。


「『いったん』戻るだけだ。また後日、調査に下りてくる。……私たち全員でな」




   ◆




 歩き始めても、二人はずっと無言だった。

 とても学生時代に大の親友だったとは思えない。


「き、気まずい……」


 わたしは小声で言う。


「先生たちにもいろいろあるのよ」

「まあ、二人のことは二人に任せておいたほうがいい」


 セレーナもリーゼロッテも、特に気にしていない様子だ。

 わたしだけ、無言の二人にどきどきしている。


「な、なんか話でもしたほうがいいんじゃない?」

(余計なことを言うんじゃニャいぞ)


 にゃあ介が釘を刺すが、わたしは何とか二人の仲を取り持とうと、口を開く。


「い、いい天気ですね!」


 …………。


 恐ろしいほどの静寂が辺りを包む。

 魔物でもいいから出て欲しいと思ったくらいだ。


「ミオン、ここはダンジョン内よ」


 セレーナの冷静な声が、静かに響く。


「セレーナ……もうちょっと早く突っ込んでよ」


 わたしは冷や汗をぬぐいながら言う。


(やれやれ、ニャ……)


 結局、それから地上に戻るまで、先生たちは一切口を訊かなかった。




   ◆




「あー、やっと戻れた!」


 わたしは伸びをしながら言う。


「この解放感!」


 地下迷宮から出ると、もう日が傾きかけていた。


「これからどうしましょう?」


 セレーナが訊く。


「今日は宿で休んで、明日、潜入の準備をしましょう。……皆さんそれでよろしいですか」


 皆がうなずく。ヒネック先生だけは黙っている。


「この街なら、今からでも宿は取れるはずです。行きましょう」




 先生の言う通り、宿は簡単に見つけることができた。

 日が暮れてからやってくる冒険者も多いらしく、この街にはそんな冒険者たちに向けた宿屋が多いそうだ。


 わたしとセレーナとリーゼロッテは同じ部屋で、ヒネック先生とエスノザ先生は、むろん一人一部屋を取った。

 荷物を置いて少し休む。


「お腹すいたあ」

「そうね。今日は慌ただしかったから」


 セレーナが同意する。

 と、窓の外を見ていたリーゼロッテが、


「あ」


 と声を上げる。


「どしたの」


 わたしはリーゼロッテの横から、窓の外へ目をやる。

 そこにあったのは街なかへ歩いていくヒネック先生の姿だった。


「ヒネック先生、食事かな?」

「まあそうだろうな。……おや?」


 リーゼロッテがまた何かに気づく。

 宿から出てくるエスノザ先生の姿が目に入る。


「あら、エスノザ先生ね」


 セレーナも窓際へとやってくる。


「どうする? なんか気になるなあ……」

「そうね……」


「よし、ついて行こう」


 わたしたちは急いで身支度を整えて、宿を出た。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ