表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
257/605

第二百五十六話 クラーケン1

 ジェイクの合図で、全員が一斉に、上陸してくるクラーケンの周りへ散開する。


「メティオ、後方支援たのむ。ルーベンダイク、ジュナ、左右に展開して敵をかく乱してくれ」


 ジェイクは指示を出す。


「心得た」

「任せてねん」

「……了解」


「君たちは……」


 ジェイクがリーゼロッテを見る。

 彼の後を受け取って、リーゼロッテが指示を出す。


「私が後方より援護する。セレーナ、ミオンはジェイクと敵を叩け」


「わかった!」

「まかせて!」


 わたしとセレーナはそれぞれ返事をする。


「よし」


 ジェイクがうなずく。


 わたしは野営地の方を確認する。

 ガルバルド先生が、生徒たちを誘導している。


「高台へ! 速やかに!」


 先生が言う。

 なるべく魔物の姿が生徒の目に入らないように、生徒たちを誘導しているのだ。


 聴こえてくる声に耳を澄ます。

 恐怖に怯える者、何が起きているのかわからずに夜中に叩き起こされて戸惑う者、それでもみんな指示に従っているようだ。


「何があったの?」

「わかんない。でも、なんかヤバそう……」


 生徒の何人かが、不安そうに話している。

 また別の何人かは、


「は、はやくはやく!」

「逃げろぉ!」


 と叫んでいる。

 彼らはクラーケンの姿が目に入ったのだろう。


 とにかく、生徒たちは続々とテントから出て、避難を始めている。


 その様子にほっとしながら、わたしは魔物に向き直る。

 クラーケンの大きさに改めて圧倒され、武器を強く握りなおす。


 ちょうどその時―――


「なんなんだいったい?」


 眠そうな声がわたしの耳に届く。

 もう一度振り向くと、そこには目をこすりながら立っているケインがいた。


「そこの生徒! はやく高台へ!」


 ガルバルド先生が慌ててケインを引き戻そうとする。


「危険な魔物が……」

「魔物?」


 ケインの声色が変わる。


「魔物だって? そうか……それじゃあ僕の出番だ!」


 ケインはうれしそうに言う。


「安心しろみんな。僕が守ってやる」

「馬鹿なことを言ってないで、はやく戻りなさい!」


 そう言うガルバルド先生の手を振りほどきながら、ケインはこちらへ歩き出そうとする。

 わたしはあせる。


「ちょっと、今こっちに来られたら……」


(足手まといどころの騒ぎではないニャ)


 にゃあ介も同意する。


「ハハッ、僕に任せろ」


 ふんぞり返りながら歩くケイン。


「僕にかかればスライムなんて……」


 ケインの足がぴたり、と止まる。


「う、うわあぁぁーー!?」


 クラーケンの姿を見た途端、腰を抜かすケイン。


「ば、化け物だぁーー!!」


 そう言い残して、ケインは這う這うの体で引き返していった。

 その姿を見ながら、わたしは思わずため息をつく。


「セレーナ、用意はいい?」


 そう訊くと、セレーナはわたしの目を見てうなずく。


 すでにメティオのパチンコ攻撃が始まっている。

 リーゼロッテも、敵に向かって矢を射り始めている。


「ジェイク、行こう!」

「ああ!」


 わたしたちは敵の側面に回り込むように走る。

 ざざっ、と砂の上を駆けながら、わたしは思う。


「いける!」


 ジェイクとリーゼロッテ。二人の素早い指示で、あっという間に戦略が決定した。

 メティオとリーゼロッテによる、パチンコと弓の援護。

 ジュナとルーベンダイクが敵の気を引いている間に、わたしたちが横から攻撃を加える。


 即席とはいえ、確実な作戦だ。

 これなら勝利は固い!



 そのときは、そう思えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ