第二百五十二話 野営の準備2
「さて、どうしたものか」
スープを作ってくれとは言われたけど……。
わたしは目の前の食材たちを眺め、考える。
「あ、これってシチューを作ったときに使ったトマトみたいなやつ。……ふむ」
「どうするの? ミオン」
「そうだね、とりあえず野菜を賽の目切りにしていってくれる?」
「賽の目ね。わかったわ」
リーゼロッテとセレーナは包丁を手に取る。
「ヤッ! セイッ!」
セレーナは魔物を剣で斬り伏せるように、野菜を切っていく。
わたしとリーゼロッテの切った野菜は、それなりに見られるが、セレーナの野菜はなかなか個性的な形をしている。
「なあに?」
「いや、なんでもないよ。さ、早く切っちゃおう」
わたしは、セレーナの料理の腕については触れないことにして、次の作業に移ることにした。
薪集めの係も帰って来て、焚き火の準備はできた。
かまど係の作った即席のかまどには、これでもかというくらい大きな鍋が三つもかけられている。
「私がやろう」
リーゼロッテが進み出て、薪に向かって手をかざす。
「ファイア」
薪にぱっと火が灯り、燃え広がる。
炎がぱちぱちと音を立て、鍋の底を炙る。いい感じに加熱されているようだ。
「じゃあ、軽く炒めまーす」
切り終えた野菜と干し肉を、鍋に入れる。
リーゼロッテとセレーナが鍋を覗き込む中、食材を炒めていく。
「そろそろ一通り火が通ったと思うし、お水を加えたいんだけど……」
と、鍋の周りを見ると、他の班ではすでに皆、魔法の詠唱に入っている。
大きな鍋に人数分のお湯を沸かすには大量の水が要るが、それを運んでくるのは重労働だ。当然、水の魔法を使うことになる。
「ウォータ!」
「ウォータ!」
と、数人がかりで鍋に水を供給している。
弱くて戦闘には使えない、なんて言われているが、こういうとき魔法はとても便利だ。
「ミオン、早くしないと焦げちゃうわよ」
と言われ、わたしは慌てて魔法を唱える。
「イブルウォータ!」
わたしの周囲に大量の水が生み出され、それが飛沫を上げて鍋に向かう――。
ドドド、と流れ込んだ水は、あっという間に鍋をいっぱいにした。
「わあ、ストップストップ!」
わたしはあせって魔法を止める。
「すごい魔力ね!」
「せっかくの料理を押し流すところだったぞ」
「あぶないあぶない」
もう何度も魔法を使っているが、いまだにどうも魔力の調整は難しい。
「やれやれ……あとはアクをとりながら煮えるまで待ちます」
◆
薪をくべながら、スープを煮込んでいる。
「それにしても、この量、食べきれるかなあ」
大量のスープを眺め、わたしは心配になる。
「大丈夫よ。いざとなったら、ミオンが全部食べればいいでしょう」
セレーナがさらりとそんなことを言う。
「いくらわたしでも、そこまで食い意地張ってないよ!」
わたしが怒ると、
「冗談よ、冗談」
笑うセレーナ。その様子を見て、リーゼロッテも笑う。
「ははは。確かに、ミオンなら食べられそうだ」
(ミオンの食欲は底なしだからニャ)
と、にゃあ介。
「もー、みんなわたしを何だと思ってんのよう!」
わたしがむくれていると、
「そろそろいいんじゃないかしら」
と、セレーナが鍋を覗き込む。
「うん、すっごくいい匂い!」
スープから、かぐわしい香りが漂う。
煮込まれた野菜の旨味と甘みが混然一体となった匂いが、食欲をそそる。
「ほんと……!」
わたしは涎を抑えるので必死だ。
本当に、一人で全部食べられる気がしてきた……。
「たっぷり野菜のミネストローネかんせーい!」
わたしはみんなを急かす。
「早く食べよう! もうお腹減って死にそうだよ」
リーゼロッテが言った。
「さあ、盛り付けよう」




