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第二百五十一話 野営の準備1

 生徒たちは、それぞれに散って行く。

 魔物が出る森には近づかないように、と注意を受けているので、みんなそこには近づかない。


「まあ、出るって言ってもスライムだけなんだけどね」


 わたしはそう呟きながら、砂浜へ降りていく。


「きれいだなあ」


 わたしたちは、波打ち際まで歩いていくと、砂の上に腰を下ろした。


 黄昏の陽が海面へ投げかける光が、こちらへ向かって真っすぐ長く伸びている。

 それはまるで、海の上を行く、金色に輝く道みたい。


「うーん、海に来たっていう感じだね」


 わたしが言うと、セレーナも同意するように首を縦に振って、


「海へ来るのは久々だから嬉しいわ」


 リーゼロッテも、うなずく。


「私も海は好きだ。カライへ旅したとき以来かな?」


(ワガハイは、魚は好きだが、濡れるのは嫌いニャ)


 そんなことを話して時間を潰していると、


「おい」


 背後から声をかけられた。

 振り向くと、ケインが立っていた。


「なに? ケイン」


 わたしが訊ねると、


「お前たち、護衛役を任されたって言うのは本当か?」


 ケインは訝し気な顔だ。


「ま、まあ……」

「嘘だろ」


 ケインが吐き捨てるように言う。


「どうしてそう思うの?」


 ケインは鼻を鳴らす。


「僕がここにいるからだよ」


 自分を指さしながら言う。


「僕を差し置いて、わざわざお前たちを指名して依頼するわけがない」

「あ、あはは……」


「お前の口車に騙されているんじゃなければな」

「いい加減にしなさい」


 セレーナがぴしゃりと言う。

 ケインはびくり、と肩をすくめる。一度、セレーナに頬をはたかれたのが記憶に残っているのかもしれない。


 それからケインは気を取り直すようにふんぞり返って、


「お前だってあやしいもんだ。本当に貴族なのか? どうせ嘘だろう」

「おい」


 リーゼロッテが口をはさむ。


「自分のことをどう思おうと勝手だが、私の友だちを侮辱するのはやめてもらいたい」

「なんだと」


 ケインの顔が険しくなる。


「ちょっとみんな、落ち着いて!」


 わたしは割って入る。


「せっかく学外授業に来たのにケンカしないで」


 リーゼロッテとセレーナが言う。


「ミオンがそう言うなら」

「仕方ない、許してやる」


 ケインは、そっぽを向いて「ふん!」と言うと、去っていった。


「相変わらずね……」

「偉そうなやつだな」


 二人が言う。


「あんなこと言わせておいて良いのかしら?」


 セレーナの言葉にわたしは苦笑するしかない。


「うん、まあ別に気になんないし」


 わたしがそう言うと、


「ミオンがいちばん大人かもしれないな」


 二人も笑った。




   ◆




 やがて野営の準備が始まった。


 夕食のための火を起こしたり、寝床を作ったり、それらをほとんど生徒だけで用意する。

 先生たちは、指導と監督だ。

 生徒たちは、それぞれ役割分担して作業する。


 テントの設営は支柱係と天幕係に別れて行う。

 支柱係は地面にロープをペグダウン(地面に打ち込む)する。そして支柱を立てる。

 天幕係は、建てられた支柱の上にシートを広げる。


 ……と、口で言うのは簡単だが、


「支柱が歪んでるぞ。もっと真っすぐ立てないと」

「やってるよ! ちょっと待ってくれ」


 とか、


「おい、シートはもっとピンと張らないと!」

「わかってるって」

「しわができてるぞ」

「もう、うるさいなあ!」


 などと、あちこちで揉める声が上がる。

 野外でのテントの設営なんて、生徒たちにとっては初めての経験なので、けっこう大変だ。


 一方、焚き火の薪集め担当は、枯れ木を集めに行く。

 こっちはまだ平和な方だ。

 しかし、魔物の出る森の深くへは決して入らないよう先生に釘を刺され、みんなおっかなびっくり薪を集めに出かけた。


 かまど係は、石と木で鍋をかけるためのかまどの作成に入る。


 そして食事担当の者は、火が用意されるまでに食材を下ごしらえしておかなくてはならない。


 わたしたちは調理の担当になった。

 ただ野菜を洗ったり切ったりするだけなのだが、量が多いので、これも結構大変な作業だ。


「わー、これ全員分用意するの? 急がないと」


 用意された野菜の山を見て、わたしはあせる。

 リーゼロッテは大丈夫そうだけど、セレーナは料理があんまり得意じゃなさそうだし……。


「なに? ミオン。早く始めましょう」


 包丁を持ってにっこり笑うセレーナに、


「あはは、そうだね」


 と相槌を打って、他の班の様子もうかがう。


「おい、そっちの包丁使いが荒いんだよ」

「なによ。あんたこそ、その切り方は雑すぎるわよ」


 と、あまり期待できそうにない。

 ふー、とため息をついてから、


「ようし、頑張るしかないか!」


 わたしは腕まくりして、調理に取り掛かった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様ですヽ(´▽`)/ 相変わらずの暴君ぶりを発揮するケイン。 きっとミオン達の冒険者ランクを見せても難癖付けて認めずに暴言を吐くのでしょうし、一度くらい痛い目に遭わないと一生理解出…
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