第二百四十九話 学外授業1
「さて、それでは!」
昼食を終え、まったりとしていると、ガルバルド先生がパンッと手を叩く。
「これからみなさんには、あの森で魔物と戦っていただきます」
「えー!?」
生徒たちから声が上がる。
「本当に魔物と戦うんですか?」
すると、イェルサの稲妻のジェイクが進み出て、その質問に答える。
「そうだよ。この海岸の魔物は、それほど強くはない。身体鍛錬の授業を真面目に受けていた君たちなら、問題ないはずだ」
それから、
「ただ、危険であることに変わりはないから、油断しないように」
と釘を刺す。そして微笑んで、続ける。
「武器はこちらで用意したものを使ってもらうから、安心して」
まだざわついている生徒たちに、ジェイクは言った。
「大丈夫。いざとなったら、助けに入るから。……それじゃあ、森に向かって移動しよう」
◆
森の中は静寂に包まれている。
先頭をガルバルド先生、エスノザ先生、ユナユナ先生が行き、その後をわたしたち生徒が、最後尾にイェルサの稲妻が続く。
生徒たちは、それぞれ渡された武器を手にしている。
今までは模造武器だったが、本物の武器を手にしてこわ張っている生徒もいる。
自前の武器を持っているものは使っていいということなので、わたしたち三人はいつもの武器を手にしている。
それとケインも、「お父さまに買ってもらった由緒正しい剣だ」とかなんとか自分の武器を自慢していた。
生徒たちは言葉少なに、森の中を進む。
「みんな緊張しているみたい」
「冒険者登録している生徒なんて少ないからな」
「何かあったら、私たちもみんなを守らないとね」
しばらく進んだとき、後方にいたジェイクが言った。
「止まって!」
全員、その場に立ち止まる。誰も言葉を発さない。
ジェイクの声だけが響いた。
「みんな、武器を構えて」
◆
「何が来るのかしら」
セレーナが呟く。
「わからない」
リーゼロッテがそう答えたときだった。
茂みがガサガサと揺れた。
「来た!」
わたしたちは身構え、それぞれの武器を構える。
「……え?」
現れたのは、スライムだった。
青く透き通った身体をぽちょぽちょと弾ませながら、こちらへ向かってくる。
「うん、Fランクレベルだね……」
もっとずっと強い魔物と戦ったことがあるわたしたちは、拍子抜けする。
しかし、他の生徒たちは、
「魔物だ!」
「魔物がきたぞ!」
と大騒ぎだ。
そんなみんなの様子は、昔の自分を見ているようで少しなつかしくさえ感じる。
「わたしも、はじめて初心者の洞窟でスライムと対峙したときは、ちょっと怯えちゃったっけ」
(それどころか尻尾を巻いて逃げ出したのではなかったかニャ?)
「そうだった?」
わたしは頭を掻いて、ぺろっと舌を出す。
パニック状態の生徒らを落ち着かせるように、ジェイクは言う。
「大丈夫だよ。あれはただのスライムだ。みんな、落ち着いて」
それから、
「武器を構えて、振る。それだけで倒せる相手だから」
ジェイクの言葉に促されるようにして、生徒たちは動き出す。
一人の男子生徒が、武器を振り下ろす。青い液体が飛び散った。
「やった! 倒した!」
歓声を上げる生徒たち。
大喜びする男子生徒。興奮で頬が紅潮している。
しかし、すぐに次の獲物が姿を現す。
ジェイクが言う。
「まだまだ来るよ。油断しないように!」




