第二百四十六話 学外授業へ出発
「私たちが、ですか?」
セレーナが驚いて訊ねる。
「そうぢゃ」
先生はうなずく。
「君たちは第一クラスの生徒ぢゃが、第二クラスと第三クラスの授業にも、護衛としてついて行ってもらいたいんぢゃ」
そこでジェイクが初めて口を開く。
「僕らイェルサの稲妻としても、君たちがいてくれれば心強い」
そう言って微笑む。
さっきのウィンクはそういう意味だったのか……。
校長先生はわたしたちの目を順に見て、
「君たちにばかり負担をかけては悪いんぢゃが……頼まれてくれるかの?」
と言った。
わたしが二人の顔を見ると、二人はすぐにうなずいた。
それでわたしは校長先生にこう答えた。
「はい、よろこんで!」
◆
わたしたちは校長室を出る。
「……他の生徒たちの護衛だって」
「イェルサの稲妻が推薦してくれた、と言っていたな」
「私たちの力を認めてくれている、ってことかしら」
「Sランク冒険者に認められちゃった……むふふ」
顔がにへら~っと緩む。
セレーナもリーゼロッテも、心なしか胸を張っているように見える。
(他人の名声を笠に着て満足してどうするニャ)
「でも光栄なことだよ」
(世界一の大魔導士になるんニャろう?)
「……うーん、そうだった。大魔導士になるために必要なのは、人の評価じゃないもんね」
「――たしかにそうだわ。他人に褒められて満足しているようでは駄目ね」
(自分を誇るのはいいことだ……ま、調子に乗らない程度にはニャ)
「とにかく、任されたからにはしっかりやらなくちゃ!」
わたしが意気込んで言うと、二人が笑顔で言った。
「もちろんよ」
「そうだな」
「そのためには、訓練、訓練!」
わたしたちは事務へ寄って、エイサさんに伝言通り校長室に行ったことを伝えると、またトレーニング場へと向かうのだった。
◆
学外授業の日はあっという間にやってきた。
わたしは前日から楽しみで、なかなか寝つけなかった。
「それにしてもミオン、ちょっと荷物が多くないか」
当日の朝、学校へ向かう坂道、パンパンに膨らんだわたしの布袋を見てリーゼロッテが訊ねる。
「だってほら、お弁当でしょ。デザートにドミンゴの実。おやつのお菓子。それにお手製のカードゲーム……」
(何しに行くんニャ……)
呆れ声のにゃあ介。
「乾燥ブラックハネンもあるよ」
(ニャハー!)
雲ひとつない快晴。
まだ早い時刻なのでそうでもないが、お昼頃にはとっても暑くなりそうだ。
「うーん、絶好の旅行日和だね!」
「学外授業日和、ね」
リーゼロッテとセレーナが笑いながら言う。
魔法学校の校門へ着くと、
「おっはようさん! おっはようさん!」
ガーリンさんが登校する生徒たちに挨拶している。
わたしたちも、みんなと一緒に挨拶を交わす。
「おはよう、ガーリンさん!」
「おう! お前さんたちは、今日から学外授業だな」
それから、
「聞いたぞ。護衛役を仰せつかったらしいな。生徒なのに頼まれるなんて、すごいことだぞ」
「えへへ」
わたしは照れて頭を掻く。ガーリンさんはガハハと笑うと、
「……馬車はあっちだ、がんばれよ!」
と送り出してくれた。
「ありがとう、ガーリンさん!」
礼を言って、校庭の東側へ向かう。
そこには、何台もの馬車が、ずらりと並んでいた。
「わあ、馬車がいっぱい!」
わたしは声を上げる。
「私も、こんなにたくさん見るのは初めてだ」
リーゼロッテも感心したようにつぶやく。
馬車の数はざっと十台以上あるだろうか。
「私は王都で見たことがあるけれど……」
セレーナが言う。
「やっぱりこれだけ並んでいると、壮観ね」
幌をつけた沢山の馬車。それを引く銀色の馬たちは、おだやかに出発のときを待っている。
(お前たちも、従順に人間の言うことを訊く必要はニャいんだぞ)
「こらこら、変なことそそのかそうとするんじゃないの」
そんなことを話しながら、集合している生徒たちの列に並ぶ。
「二回生はこちらへ!」
指揮を執っているのは、ガルバルド先生だ。
「みなさん、これから学外実習について説明します」
いよいよ始まるんだ。わたしは息を呑む。
「今回行く場所は、ここから南東にある海岸地帯です。ここから馬で行けば、昼頃までには着くでしょう」
先生の説明を聞きながら、わたしは考える。
海かあ。きれいな海だといいな。泳げるかな?
「Fランクレベルの魔物しか出現しないことを確認してありますが、くれぐれも注意してください」
先生の言葉に、生徒の中から、「へっ、大丈夫さ」と自信ありげな声が上がる。ケインだ。
「こちらで確認を取りますので、紙に自分の名前を記していってください」
そして、先生は言った。
「それでは、みなさん、乗り込んでください」




