表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
238/605

第二百三十七話 調査2

「ぎゃーっ!」

「いやーっ!」


 わたしとセレーナは、一目散に逃げ出そうとする。

 しかし、リーゼロッテが襟首をつかんで二人を引き留めた。


「まてまて。何か理由があるはずだ」


 教室の中を覗くと、たしかに骨の標本が、カタカタと動いている。


「何かって……標本が勝手に動く理由なんて、おばけしかないじゃん!」


 わたしはべそをかく。


「こんな……こんなことって……」


 セレーナの声も震えている。

 リーゼロッテは困ったように言った。


「私にもわからない。だが……」


 次の瞬間、リーゼロッテは信じられない行動に出た。

 教室の扉を開けると、ずかずかと中へ入っていったのだ。


「り、リーゼロッテ!」


 わたしは呼び止めようとするが、彼女はそのまま歩いていく。


 リーゼロッテは、教室の中へ進んでいき……こう言った。


「こんばんわ」




   ◆




「わあ! リーゼロッテがあたまおかしくなっちゃった! おばけのガイコツに挨拶してる!」

「なんてこと! おばけにとりつかれたのよ! もうだめだわ、ミオン」


 わたしとセレーナは恐怖のあまり、抱き合ったまま、へなへなと座り込む。


「二人とも、こっちへ来てみろ」


 リーゼロッテが言う。


「わ、私たちのことを呼んでるわ!」

「だめだぁ! わたしたちもとりつかれるんだぁ」


 わたしとセレーナが涙目で震えていると、


「馬鹿なことを言ってないで、よく見るニャ」


 とにゃあ介。


 リーゼロッテが言う。


「ほら。先生だ」


 彼女が指さす先を見ると、標本の後ろに、ガルバルド先生がしゃがんでいた。


「どうしました、みなさん?」


 きょとん、とした顔のガルバルド先生。


「せ、先生!?」

「こんなところで何をしてるんですか!?」


 すると、


「いやー、お騒がせしたならすみません」


 先生は頭を掻きながら、言った。


「何度組み立ててみても、右手の骨が足りないんですよ。参ったなあ」




   ◆




「動くスケルトンソルジャーの犯人は、ガルバルド先生だったのだな」


 帰り道、リーゼロッテは可笑しそうに言う。


「まったく、人騒がせなんだから!」


 わたしはぷんすか腹を立てる。


「ミオンは怖がりすぎよ。おばけなんているわけないでしょ」


 と言うセレーナにわたしは、


「セレーナだって、すっごい怖がってたくせにー」


 と言い返す。


「そんなことないわ。すこし驚いただけよ」

「うそだ~。もうだめだーとか言ってたじゃん」


「そんなこと言ってないわ。ミオンでしょう言っていたのは」

「あっ、人のせいにしようとしてる! 言ってたもんね、『ミオン、もうだめ~』」

「言ってません」

「『ミオン、しんじゃう、しんじゃう~』」


 そんなわたしたちのやり取りを見て、リーゼロッテとにゃあ介は呆れて言った。


「やれやれ」




   ◆




 動く標本の謎は解けたけれど、本題は学校のどこかから聴こえる声の謎だ。

 翌日は、一階の教室を中心に見て回ることにした。


 リーゼロッテは、


「時間がかかるから手分けをして調べようか」


 と言ったが、わたしとセレーナは断固として反対した。


「絶対ダメだよ、そんなの」

「私も反対だわ」


「なぜだ? その方が効率がいいのに」


 不思議そうなリーゼロッテ。


「なぜって、そりゃあ……」

「そうよ。それは……」


「??? 全然わからない……」


「素直に、一人は怖いからだと言えばいいニャ~」


「ち、違わあ!」

「ち、違いましてよ?」


 そんなことを言い合いながら、わたしたちは教室を覗き込んでいく。

 誰もいない教室は、がらん、としていてなんだか寂しい。


「誰もいないし、何も聴こえないね」

「みんなが下校した後の学校は静かね……」


 セレーナが言う。

 たしかに校舎は静まり返って、人の気配どころかなんだか現実感さえないように感じられる。


「ああ。そうだな……」


 リーゼロッテはうなずくと、


「一応、あそこも見ていこう」


 そう言って、廊下の向こうを指さした。




   ◆




「ここかぁ……」

「別におかしなところはなさそうだけれど……」


「ここもハズレかな」


 わたしたちがやってきたのは、トイレの前。


「こんなところに何かあるかなぁ」


 わたしが首を傾げていると、


「まあ、入ってみればわかることだ」


 そう言うと、リーゼロッテは男子トイレの方へ入ろうとする。


「ちょ、ちょっと待ってリーゼロッテ。そっちは男子用だよ!」

「そうだが?」


「そうだがじゃないよ! うら若き女子が入っちゃだめでしょ!」

「だが調査をしなければ」


「そういう問題じゃなくて、だめったらだめなの!」

「そうか……しょうがないな」


 リーゼロッテは仕方なく引き下がった。


「はー、あぶないあぶない。もう、リーゼロッテってば、デリカシーがないんだから」


 ほっとするわたし。セレーナもため息をつく。


「それじゃあ、とにかくこちらの中を調べてみよう」


 リーゼロッテは女子トイレを指さして言った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様ですヽ(´▽`)/ 冷静なリーゼロッテに対するミオンとセレーナの二人の温度差が愉しい事になってますね(笑) しかしこの世界って結局の所、モンスター扱いの幽霊やオバケって存在する…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ