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第二百三十二話 再戦2

 まずは、お互いに離れて、遠距離攻撃による牽制から始まった。


 イェルサ組はメティオがパチンコで模造弾を放ち、

 クレセント・ロペラ組はリーゼロッテが弓で模造矢を放つ。


「気をつけて!」


 模造弾を避けながら、セレーナとわたしは間合いを詰める。


「よっ、ほっ」


 ルーベンダイクの槍が飛んでくる。

 わたしは剣で応戦する。


 セレーナも、ジェイクとの剣の打ち合いが始まる。


 ここまでは、前回と同じ展開だ。


「あぶない!」


 メティオのパチンコ弾を半身でかわす。


 一見すると互角の戦いに見えるけど、実はそうじゃなかった。

 連射がきくパチンコの方が、この戦いでは有利だ。


 遅かれ早かれ、手数で勝る相手にポイントが入ってしまうだろう。

 はやく戦況を変えなければならない。


 セレーナとリーゼロッテが動いた。


「我求めん、汝の業、天に麗ること能わん……ダークフレイム!」

「噴けよ水、立てよ波……ウォータ!!」


 セレーナが炎の魔法を、リーゼロッテが水の魔法を同時に放つ。

 しかし……。


「むっ!」


 ルーベンダイクは、槍を正面で高速に回転させ、リーゼロッテの放った水の魔法を飛散させる。


 ジェイクは身体を翻し、


「ミオン君の魔力は校庭で使うには大きすぎる」


 火の玉を刀身でさばきながら、言う。


「代わりに君たち二人が魔法で攻撃してくるのは……予想済みだよっ」


 セレーナの炎攻撃も、いとも簡単に避けられてしまう。


「悪くないアイデアだったけれど、イェルサの稲妻には通用しない」


 ジェイクはいたずらっぽい笑みで、挑発する。


「さあ、用意してきた作戦はそれだけかい?」


 セレーナとリーゼロッテは目を見交わし、うなずく。


「ミオン!」

「やってくれ、ミオン」


「わかった。援護お願い!」


 二人に守ってもらいながら――わたしは詠唱をはじめる。


「我が傍なる霊魂よ、小さき者に乗りてとび、その翼にて翔けり給え……」


 前回、数的優位を作ろうとして、それを逆手にとられ、失敗した。

 浮いた位置にいる相手を狙って三対一を作ろうとしたのだが、それを読まれて、逆に数的優位を作られてしまったのだ。


「ブラストスピリット!」


 それならば、浮いた位置だとか相手との距離とか関係なく……

 誰が見ても間違いようのない、絶対的な数的優位を作ってしまえばいいのだ。


 ――わたしは詠唱を終える。


「これは……」


 ガルバルド先生が息を呑む音が聞こえる。


「闘魔術……?!」


 わたしは呼び出す。もう一体の、わたしたちの仲間を。


「胡桃沢美音の名において命ず。出でよ、ゴブリンガード!」




   ◆




「おおっ!」


 土が舞い上がり、一か所に集まる。

 見えない巨人たちが大きな息で吹き寄せているかのように、土塊は大きくなっていく。

 その様子を見て、ガルバルド先生は感嘆の声を上げる。


「これが召喚か……!!」


 先生は土砂が凝集していくのを、食い入るように見つめている。

 やがてその中に、意味のある塊が形作られていく。


「うおっ!」

「…………!?」

「なんだこれは?」


 土色の塊はゴブリンガードの形をなす。

 いきなりあたりの土が集まって、妙な生き物が出現したことに、イェルサの稲妻は面食らっている。


「キャーッ!」

「ま……魔物だぁっ!」


 観戦している生徒たちの悲鳴があがる。


 わたしたち三人はすでに動き出している。


 セレーナとリーゼロッテには話してあった。


「短期決戦だよ」と。

「Sランクパーティに、ゴブリンガードでは歯が立つはずない。だけど、不意は打てる。今回はそれでいいんだよ。だって……」


 わたしたちは走り出す。


「こっちは四人だ!」


 イェルサの稲妻は、体勢が整っていない。

 土でできたゴブリンガードが、ジェイクにとびかかる。


「なっ、こいつは……まさか!」


 ジェイクが慌てて回避する。


 ゴブリンガードはこちらの狙い通り、とにかく暴れてくれる。


 ルーベンダイクも、わたしの攻撃を避けつつジェイクのカバーに走る。

 メティオの攻撃も突然現れた魔物に集中している――。



 セレーナがジェイクの額から一本をとる。

 ルーベンダイクの肩に背後からリーゼロッテの矢が命中し、有効打。


 わたしはメティオの前に立っていた。


「ごめんね」


 てへ、と笑い、


「今回はわたしたちの勝ち」


 メティオのおでこにチョップを決めた。




   ◆




 わたしが魔力を解除すると、ゴブリンガードの身体はざらざらと崩れ、土に戻る。


 静まり返る校庭。

 みな、崩れ去った魔物のいた一点を、息を詰めて見つめている。


 そんな静寂の中、ガルバルド先生の声だけが響いた。


「すばらしい……!」




「そこまで!」


 ジュナが模擬戦の終了を宣言する。


「ミオン組の勝ち!」


 そう言うジュナの顔も、驚きに満ちている。


「……いったい、どういうことかしらん?」

「えっと……それはですね」



 わたしは、秘策の種明かしをする。



「闘魔術とな?」

「魔物を召喚なんて、初めて見たよ」

「……おどろき」


 イェルサの稲妻は一様に衝撃を受けている。

 それよりも、もっと驚いていたのは、校庭のみんな。

 さらに驚いているのはガルバルド先生のようだ。


 ガルバルド先生は、ショックのあまりその場に立ち尽くしている。


 生徒のみんなは、口々に話す。


「お、おい」

「今のはなんだ? 魔物が出てきたよな?」

「ああ、土が集まって……動いて……」

「いったい、どうなってるんだ!?」


 わたしは、校庭をぐるっと見回す。

 みんな、驚きと興奮を隠せない様子だ。


 しばらく校庭の動揺は収まらなかった。


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