第二百二十八話 組み上げ
「エオル先生」
わたしたちは薬草学の教室に来ている。
エオル先生はすり鉢でドクダミに似た大きな葉っぱをすり潰していた。
薬草学の教室は、いつもいろんな草花の香りが満ちているが、嫌いじゃない。
「ヒネック先生に解毒薬を作ってくれと頼まれましてね……どうしました? みなさんそろって」
エオル先生は額の汗を拭いながら、わたしたちに問いかける。
「あの、実は……完成したんです」
「?」
「製薬機です!」
わたしは言う。
「もう組み上げるだけなんです」
とセレーナ。
エオル先生は目をぱちくりさせる。それから、
「本当ですか!?」
すりこぎを持ったままの先生の顔がぱあっと明るくなる。
「はい。だからそのお知らせをしようと思って」
「エオル先生も、組み上げに立ち会っていただけるだろうか? 機械の使用法の説明もしたいんだ」
リーゼロッテが言うと、
「もちろんですとも!」
エオル先生は大きくうなずいた。
「ええと、ちょっと待って下さいね……これと、これと……」
エオル先生は薬草の束が入った瓶をいくつか棚から取り出し、小脇に抱える。
「では、行きましょうか」
「はい。ついてきてください」
ガーリンさんの見張り小屋へ向かう道すがら、エオル先生がふと言った。
「でも、本当にできるとは思いませんでした。それもこんな短期間で」
「ガーリンさんのおかげなんです」
「ああ、そういえばガーリン殿は、工作好きなドワーフだったんでしたね」
エオル先生はぽんと手を打った。
「ガーリン殿なら納得ですね。いやあ、楽しみです」
興奮気味のエオル先生と話しながら、わたしたちは並んで歩いた。
◆
ガーリンさんとリーゼロッテの指示に従って、わたしたちは部品を組み上げていった。
エオル先生は、順調に出来上がっていく製薬機をそわそわしながら見守っていた。
「ほっ? ほほう!」
部品が取り付けられるたびに、エオル先生は驚きと喜びの声を上げる。
何日もかけて作った製薬機が完成する。
ガーリンさんの言う通り、なんだか終わってしまうのがちょっとだけ惜しい気がした。
◆
「できたぞ!」
ガーリンさんの声が響く。
「とうとう完成だわい!」
わたしたちの目の前には完成した製薬機が、堂々と鎮座していた。
「これが……!」
エオル先生は目を丸くして、それを見つめている。
ガーリンさんは満足げに微笑む。
「なかなかいい出来じゃないか」
「はやく!」
エオル先生は手をばたばたさせながら叫んだ。
「はやく動かしてみましょう!」




