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第百六十四話 冒険者ランク

 翌朝のリーゼロッテは、いつもと変わらないリーゼロッテだった。


 いや、いつもよりももっと元気かも。

 いつも通り無表情な彼女だけれど、なんとなくそう思う。


 抱えているものを話すことで胸のつかえが取れたのだとしたら、わたしもうれしい。

 ちょっとはリーゼロッテの役に立てたっていうことだから。


 とにかく、そこにはいつも通りの三人がいた。




 ドートのギルドに向かう道中、


「ちょっと相談なんだけれど」


 セレーナがそう切り出す。


「前に、言われたわよね」

「ん?」


 セレーナの意図することがわからず、わたしは訊き返す。


「グランパレスの隼のジルに……」


 セレーナは後ろ手に、地面の石を蹴っている。

 なんだろ、言いにくいことかな?


「えーと、なんだっけ」

「ほら、ワイバーンを倒して下山した後で……」


 セレーナはもどかしそうに言う。

 わたしが思い出せずにいると、にゃあ介が言った。


「冒険者ランクを上げたらどうかと言っていたニャ」


 そこでわたしはようやく思い出す。


「冒険者ランク……ああ、そういえば」

「わ、私はどっちでもいいんだけれど」


「セレーナ欲しそうだったもんね、Sランクバッジ」


 するとセレーナは、


「い、いえ。べ、別にバッジが欲しいわけじゃなくてよ」


 と取り乱す。


「Sランクになると、ギルドの扱いが違う、って言っていたから……」


 モゴモゴいいながらセレーナは言い訳する。


「あはは。……うん、面白そうだし、いいかも。リーゼロッテは?」

「ふむ。冒険者ランクか。その方が何かと都合がいいかもな。私も異存はない」


「よし、じゃあ決まり。冒険者ランク上げちゃおう!」




   ◆




「ここではCランクまでしか受けられないんですよ」


「えーっ、そうなの。つまんない」


 受付の、若くて気弱そうな男性に言われ、拍子抜けしてしまう。


 ドートのギルドは小さくて、酒場もカウンターと二つのテーブル席があるだけだ。

 せまい店内には、お酒の匂いと冒険者たちのつまむ海鮮料理かなにかの匂いが立ちこめている。

 それにしても、Cランクまでだけなんて……。


 わたしが口をとがらせていると、


「お嬢ちゃんたち、何ランクを受けるつもりだったんだい」


 酒場にいた冒険者の一人が声をかけてくる。

 わたしは答える。


「あ、Sランクです」

「ははは。で? 何ランクなんだい」


 冒険者は笑う。


「あの、本当にSランクを……」

「冗談言っちゃいけない。今君たちは何ランクなんだい」


 一緒にいた他の冒険者も興味を持ったのか、わたしたちの方へ視線を向けてくる。


「あ、あの……」


 わたしは正直に言う。


「Fランクです」

「…………」


 しばしの沈黙。それから、


「ぎゃははは!!」


 冒険者たちは腹を抱えて笑い出す。

 わたしがぷくーと膨れていると、


「いやー笑わせてもらった」


 と、まだお腹を押さえながら、


「お礼に教えてあげよう。このギルドではCランク試験までしかやっていない。Bランク、Aランクが受けたければもっと大きなギルドへ行かないと」


 そう話す。


「そしてAランクになったならば、ようやくSランクの試験が受けられるわけだが……」

「Sランクは、この大陸では王都グランパレスのギルドでしか受け付けていない」


 口々にそう教えてくれた。冒険者ならばみんな知っていることらしい。


「それも、何日もかかるような超絶難度の昇級試験をこなさないとならないんだ。100組のAランクがいても、1組受かるか受からないか……」

「えーそうなの? 結構めんどくさいんだ……」


「それから、昇級することができるのは、一度に1ランクずつだ。2つも3つも飛ばして上がることはできないのさ」

「えーっ、そんなあ」


 わたしは眉間にしわを寄せて、二人に訊ねる。


「どうする? セレーナ、リーゼロッテ」


「そうね……」


 思案気なセレーナ。


「とりあえず、Eランクだけでも受けてみるか」


 リーゼロッテが言うと、冒険者の一人が、


「とりあえず?」


 と不思議そうな顔をする。


「一度に1ランクしか上げられないならしょうがない」


「そうだね。じゃあ、下の方はちゃちゃっと済ませちゃおう」


 わたしの言葉に、


「ひゃはー!」


 と冒険者たちはまた腹を抱えて笑い始めたのだった。


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