第十四話 魔法学校!?
洞窟の入り口から差し込む陽の光が傾きかける頃には、わたしのポケットは、魔石:「スライム」でずっしりと重たかった。
じゃらじゃらと心地よい音をさせながら、意気揚々と洞窟を後にした。
「今日は、どの宿に泊まろうかな」
わたしは、ポケットの上から、魔石をナデナデしながら街を歩いていた。
「シズの止まり木でもいいんだけれど……」
うーん、と考える。
「贅沢ばっかりしてられないよね。普通の宿にしとこう」
でも、まだちょっと早いかな。わたしは太陽を見上げる。
「情報収集を兼ねて、ギルドに顔出してこ」
ギルドへつく頃には、暗くなりかけていた。
サマンサさんに挨拶して、わたしは奥の酒場へ歩き出した。すると、
「あ、ちょっと待って」
と、呼び止められる。
「あなたこれ、持ってないでしょう」
サマンサさんが、何かを手渡してきた。
「ん? 何ですか、このバッジ」
「ランクバッジ。それはFランクの証よ」
「へぇー」
かっこいい! これでわたし、本物の冒険者と認められたんだ!
「ありがとー! サマンサさん!」
「どいたしまして」
サマンサさんがウインクする。わたしはニトニトと笑いながら、バッジを握りしめて、酒場のテーブルへ向かった。
「お、来たな嬢ちゃん」
「初心者の洞窟はどうだった?」
わたしはポケットをぽん、と叩いてみせる。
「! それ全部『スライム』かい」
「やるじゃねえか嬢ちゃん」
「スライム全部狩っちまったんじゃねえだろうな」
「えへへー」
みんなに褒められて、うれしいのと照れくさいので、わたしは鼻の下を掻く。
「お嬢ちゃんは、戦士志望なのかい?」
「戦士?」
「職業だよ。冒険者にはいろんな職業があるんだ。それくらい知ってるだろ? 戦士、弓使い、シーフ、アサシン、魔物使い……」
そんなに色々あるんだ。……アサシンなんて、かっこいいかも。
「あ、そうだ」
ふと思い出して、わたしは訊いてみた。
「あの、前にギルドで見かけたんですけど、黒いマントを被った人いましたよね?」
「黒マント? ああ、あの魔法使いか」
「魔法使い!」
やっぱりそうだったんだ。この世界には魔法が存在するんだ。
わたしの脳裏にかつての映像がよみがえる。
自分の部屋で、ラノベに出てくる呪文を叫んだ毎日。
いつか心の底に押し込めた希望。
叶わなかった夢。
そういったものが噴出しそうになる。
もう、忘れたはずだった。
誰にも言えない恥ずかしい過去。
なかったことにしたい、わたしの黒歴史。
……だけど、最高に楽しかった。
「今日、あの人いないんですか」
「あー、あいつ、他の大陸に渡ったらしい」
ちょっとがっかりするが、すぐに気を取り直して質問する。
「そうなんですか……他に魔法使いの方は……」
「いないね」
「魔法使いって珍しいんですか」
「このギルドじゃ、滅多に見ないな」
「それじゃ、他のギルドにはいっぱいいるんですか、魔法使い」
「さてねえ……俺はここ以外行ったことねえし」
「魔法使いになるには……」
わたしが質問攻めにしていると、
「そんなに魔法に興味があるならさ」
その男性は言った。
「学校で、魔法でも習ったらどうだい」
その一言に、わたしは、ネコ耳までピンとそば立った気がした。
魔法学校!?
それって、魔法を習えるってこと?
気が付くと手が震えている。
わたしは、身を乗り出して訊ねた。
「く、詳しく聞かせてください!」
「俺も詳しいことは知らないんだけど。だって、俺戦士志望の肉弾派だからさ」
と、その人は話し始めた。
「何でも、西の大陸には、魔法学校てのがあって、魔法の使いかた、教えてるらしい」
「魔法の使い方……」
聞いただけでわくわくしてくる。どうやって習うんだろう。先生はどんな人? 授業はどんなかな。
それと同時に、不安点も浮かぶ。誰でも入学できるのかな。月謝、かかるんだろうか。
いや、ともかく行ってみなくちゃはじまらない。
「もっと教えてください。その学校の詳しい場所、わかります?」
「いや、それくらいだよ、知ってるのは。西の大陸へ渡れば、もっと情報も集まってくるんだろうけどな」
「西ですか……」
「だけど、西へ向かう航路は危険で、滅多に船は出ないぜ」
男の人はそう言った。
危険な航路か。何だか怖いけれど……。
でも、西へ行けば魔法学校が待ってる。迷う理由はない。
……決まった。わたし、ミオン、これより西へ向かいます!




