第九十八話
夕暮れの島を、俺、ソルティアさん、エリシアさん、オリビアちゃんの四人で、島での思出話しを聞きながら歩いた。島は起伏が大きく、険しい坂を登っていく。勾配が三十度くらいあって、本当に険しい坂なのに、誰一人として息が上がっていない。小さい頃から歩いていて、慣れているのだろう。本当にここが出身なのだと感じた。
それにしても、本当に小さい島だ。十分歩いても家が見当たらない。これでは早々に逃げ出したくなってしまうのもしょうがないと思える。
そうして歩いて三十分して、一つの家にたどり着いた。それなりに大きい家だ。十人くらいなら過ごせそうだ。
「着いた! 変わらないなぁ……」
エリシアさんが、懐かしそうにその家を見ている。彼女の生家なのだろう。
「お姉ちゃんとソルお姉ちゃんと、カーディルお兄さんが来たって行ってくるね!」
オリビアちゃんが俺たちの来訪を告げるために家の中に入っていく。というか、俺とソルティアさんもここに入るのか?
「ソルティアさん、今日はどこに泊まるの?」
「え? 私たちもここに泊まりますよ?」
俺とソルティアさんが、お互いに首を傾げる。何故か会話が噛み合っていない。そこに、エリシアさんが割って入ってきた。
「そっか、カーディル君は知らないもんね。ソルは、ここにいる間は私たちと一緒に過ごしたんだ。だから、こっちにソルの実家は無いのよ」
「でも、幼い頃はこっちで過ごしたんだよね。ご両親とかはどうしてたの?」
そう聞くと、エリシアさんとソルティアさんは悲しそうな顔をした。
「ソルの両親は、その、ね」
エリシアさんのその一言と、その悲しい表情で、触れてはならない部分に触れてしまったことに気が付いた。
「なんか、ごめん。今の質問は忘れて」
「ううん、こっちこそ先に説明しておかなかったから。そういうことだから、今日は私の実家で泊まるから」
聞いてはいけなかったらしいことを聞いてしまったことで、少し雰囲気が悪くなってしまった。悪くしてしまったのは俺なので、申し訳なさも合わさってどうすればいいのか分からない。
「お姉ちゃん! 入っていいよ……ってどうしたの?」
そんなところにオリビアちゃんが戻ってきた。そこで、その気まずげな雰囲気に気付く。
「いや、なんでもないよ。さぁて、お父さんとお母さんも元気かな!」
「そ、そうだね。私もおじさんとおばさんが元気だか気になるなぁ」
エリシアさんが、無理に大きな声を出して元気を装ったので、ソルティアさんも同様に大きな声を出す。俺も、それに合わせて何もなかったように振舞った。オリビアちゃんは、首を傾げたが納得して家へと誘ってくれた。今度からは、こういう風に不用意に聞かないようにしようと思ったのだった。




