第八十二話
俺が受付の人についていくと、奥にある一室に通された。中には、二人用のソファーと一人用のソファーがあって、一つのテーブルを囲んでいた。
「ただいま、巫女様をお呼びしてきますので、しばらくお待ち下さい」
受付の人は、俺が部屋の中に入るのを見て、そう言って部屋を出ていった。
待てと言われたので、遠慮なくソファーに座って、部屋の中をキョロキョロと見渡す。あまり装飾のない、質素な部屋だ。しかし、家具は全て使い心地の良さそうな、高級そうなもので揃えてあるので、悪い印象は受けない。
そんな風に部屋の批評をしていると、部屋の外からパタパタという足音が響いてきた。そんな足音が、部屋の扉の前までやってきた。
「すいません! お待たせしました!」
足音の主は、部屋の外でそう言ってから、部屋の扉を開いた。そこから入ってきたのは、巫女の衣装を着た、ソルティアだった。まぁ、分かってたけど。
「いや、今来たとこだよ。もし忙しかったりしたら、後日改めてくるよ」
どうやら、仕事中か何かだったのだろうと思ってそう言うと、とんでもないです! と言いながら、俺が座っているソファーの対面にあるソファーに座った。
「ところで、カーディルさんはどんなご用でここに来たんですか?」
ソルティアは、席に着くなりそう言ってきた。なので、取り敢えず、先程知ることができた真の世界について詳しく教えてやることにした。何故かは知らないが、重要人物に指定されていた俺が知らなかったことを、自分達の国のトップが知っていたことに少し腹を立てていたが、それ以外の部分は、概ね素直に聞いてくれた。
「わざわざ教えに来てくださったんですね。ありがとうございます。そうすると、言い伝えが正しい可能性が高くなったということだから、動乱の時代というのがやってくるっていうことですよね」
ソルティアが、何気なく言った一言だったが、俺が気が付いていないことを言った。なるほど、それもあったな。
「動乱、ということは、戦争でも起こるのかな?」
と、自分でそこまで言って、魔族が侵攻してくるという話を思い出した。戦争は冗談だとしても、魔族が来るというのを予期しているのかもしれない。
そう言おうとして、ソルティアを見てみると、暗い表情をしていた。
「やはり、戦争なのでしょうか。私は戦争を体験したことは無いのですが、それはそれは悲惨なものだと伝わっています。出来れば、そんなことは起こらないで欲しいものです」
暗い表情でそう言うソルティアは、巫女服も相まって、どことなく神聖に見えた。それはさておき、俺は、魔族という存在がかつていて、その侵攻があるかもしれないというのを話した。それでもソルティアは、戦いがあるということは、やっぱり悲惨なことですと言って、嘆くような表情をした。この人、良い人だと、思った。




