第七十一話
俺は、パティルを城のパティルの部屋まで送り届けて、家へと帰った。パティルが結婚する事を考えたときの胸の痛みは、気のせいだと思うことにした。そんなこと考えても虚しいだけだしな。
そんな風に考えながら走っていると、直ぐに家に着いた。家へと入って、一応ただいまと声を出したが、時間も遅かったので、誰も応じてはくれなかった。まぁ、むしろ応じられたらビビっただろうから良いんだけど。
リビングに行くと、テーブルの上に俺の夕食が置いてあった。上には、ネリアさんの字で、お疲れ様、ネルの字で、頑張ってね、と書かれた紙が乗せられていた。なんとなく、胸が暖かくなった。
正直、パーティーで色々と食べてきたので、必要ではなかったが、食べてあげないといけないと思って、しっかりと完食した。なんとなく、心が籠っている気がした。
そして、湯船に向かった。お湯は流石に入っていなかったので、自分でお湯をはって入る。思わず、ため息が出てしまうほどに気持ちがいい。想像以上に疲れきっていたようだ。
そのまま、ずっと全身を弛緩させていると、ふと、監視されているような、何かの視線を感じた。
「誰かいるの?」
誰も居ないだろうと思ったのだが、取り敢えず声を出してみると、突然、風呂場に入るための扉が開いた。
「気が付いてたならそう言ってよ、お兄ちゃん」
そこから入ってきたのは、なんと、ネルだった。風呂場に入ってきたのに、服を着たままだ。まぁ、服を脱がれて入ってこられても戸惑うだけなのだが。
「いや、気が付いてなかったよ。それに、もう寝てたんじゃないの?」
「寝てたよ。だけど、なんか、誰かが入ってきた気がしたから起きた」
マジかよ。俺は殆ど気配を消して、起こさないように細心の注意を払ったのに、その俺に気が付いたのか?もしかしたら、俺の妹は武術とかの才能があるのかもしれない。
「そっか。でも、もう遅い時間だから寝た方が良いよ」
俺がそう言うと、ネルは不機嫌そうな顔をした。
「え~、もう眠くないよ。それに、お兄ちゃんがお風呂入ってるの見て、入りたくなっちゃった。一緒に入って良い?」
ネルは、俺が言ったことを聞くどころか、そう言って返事を聞くことなく、自分の服を脱ぎ始めた。よくわからないが、ネルは俺と一緒に風呂に入りたがるのだ。俺も、別に嫌ではないが、もう十一歳なのに、兄と風呂に入りたがるのはどうなのだろうか。
そんなことを考えていると、ネルはあっという間に裸になり、風呂に入った。裸の女の子を見ても、特に興奮もしないのは、やっぱり妹だからなのだろうか。
「気持ち良い~」
ネルは、俺の隣で、俺と同じように全身を弛緩させる。
「程々に入ったら、寝るからね」
俺がそう言うと、ネルは、は~い、と言って、俺に体をもたれさせた。まぁ、こんな日もあって良いよな。俺も、お湯に全身を委ねながら、そんな風に思った。




